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とある男子高校生の日常  作者: 桜木葉
5/10

2020-08-25

「腕組みして難しそうな顔して何してんの?」

 振り返ると七夕が若干眉間にしわを寄せて、こちらを見ていた。

「いや、見ての通り散らかっててさ」

 体を隣によけて、自分のロッカーの中を七夕から見えるようにした。

「ああ、確かに汚いねえ。プリントと教科書がまるで地層みたいに積み重なってるし」

 その言葉の通り、ロッカーの中は下から上までプリントと教科書と参考書がバラバラに積み重なっている。さすがにどこに何があるか分からなくなってきたので、整理しようかと思案していたのだった。

「へえ、そうなの。にしても、整理整頓がなってないねえ。私のロッカーの百倍は汚いよ」

 確かに汚いのは認めるけど、それでも百倍汚いというのは少し心外だった。

「さすがに百倍はないだろ」

「いやいや、百倍でも控えめな方だよ。なんなら私のロッカー見てみる?」

 そういってスタスタ歩いて行って、ロッカーを開けて、七夕がドヤ顔で僕を振り返る。そこまでされては引くに引けないし、七夕のそばまで歩いて行って、ロッカーの中を覗き込むと、確かに僕のロッカーとは比べ物にならないくらいに綺麗で、自分のロッカーを思い浮かべて、悲しくなった。

「ロッカーの整理整頓するよ」

 とぼとぼ自分のロッカーの前に戻って、一度ロッカーの上に中のものをすべて取り出して置いた。とりあえずプリントと教科書・参考書の二つに分けていき、いらないプリントは教室のごみ箱に丸めて投げ込む。捨てたプリントと残したプリントはだいたい同じくらいの量だった。

「平積みにするのがいけないんだよ。縦に置かなきゃ」

 もう放課となっているのに、七夕はまだ残っていたようで、僕が出したものを中に戻しているいると、また僕の後ろに立っていた。そういえば、七夕のロッカーも教科書は縦置きになっていた。

 素直に、教科書と参考書を縦にしてロッカーに入れて、プリントも中に入れようとロッカーを覗いたまま、ロッカーの上に手を伸ばすと冷たい金属が手に触れただけで、どこにも紙の触感が見つからない。

「プリントもそのまま入れたら、駄目だよー。ちゃんとバインダーにでもまとめて入れないと。これ使ってないやつだからあげるー」

 差し出された黄緑色のブックタイプのバインダーを受け取って、開けてみると、さっきまでバラバラだったプリントは綺麗にそろえられて、金属で中に挟まれていた。

 それを中に入れて、ロッカーを覗くと、つい三十分前とは見違えるほど整理整頓されて綺麗になっていた。

「どうもありがとうございました、七夕さん」

 普段は頭を下げることはないけど、今日ばかりは素直にそうした。

「ははは、どういたしまして。じゃあ、手伝ってあげたから、ちょっとした私のお願いでも聞いてもらいましょうか」

 顔には出さなかったけど、しまったと思う。七夕がどうも真面目にロッカー整理を手伝ってくれることを、心のどこかではおかしいと感じていたけど、そういう魂胆だったのか。

 でも、手伝ってくれたことは事実だし、どうとでもなれと、七夕が次に口を開くのを待った。

「葉の手伝いしてて帰るの遅くなったから、家まで送ってね。か弱い女子高生には帰り道は怖いからー」

 よく見ると七夕は鞄を背負っていた。

 了解と短く言って、教室に鞄を取りに戻る。廊下から、愉快そうにころころと笑う七夕の声が聞こえてきた。

読んでくださりありがとうございました。

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