2020-08-21
「あーあ、どうして明日は休みじゃないんだろうな?なあどうしてんだよおっ、桜木ィっ」
周りの目もあってあんまり大声を出せないせいか、僕の机の前に立つ宮内真紅の声はカラオケでビブラートの評価を余裕で得られそうなくらい震えていた。
もう掃除も終わり、ぞくぞくと入り口から人が帰ってきているのを真紅の背後に見ながら、僕は頬杖をつく。
「そりゃあ、僕に言ったって詮方ないよ。全〇模試があるんだからさあ。いいじゃん別に、真紅は成績いいんだし」
「良かぁねぇよ。俺は読みかけの小説が読みたいんだよぉぉ。成績がいいからこそ、俺がどうして模試なんかを受けなければいけないんだぁぁ」
声を抑えきれず、魂の雄たけびをあげた真紅とそのすぐそばにいる僕に、一瞬視線が集まり静かになる。すぐに元のようになったけど、少しクラスメイトに申し訳なかった。
およそ、テストの点が良くない僕には理解しがたい話で、わざとらしくため息をつく他なかった。そんな僕を見て、真紅の方も盛大にため息をついた。
「まあ、そうだな。確かに仕方ない。人生諦めも肝心だからな。にしても、今年は、ぜーんぜん夏休みもなかったし、どこにも出かけられなかったし……。あーあ、あーあ、あーあ……、あっ、やっべ、神山っちが入ってきた。じゃあな」
なにやら色々抱えて教室に入ってきた担任を見るなり、真紅は自分の席に戻る。おそらく今週の土日の課題なんだろうと思い、憂鬱になった。
読んでくださりありがとうございました。