始まり! 前編
ゲームがゲームを維持し発展させていくそんなシステムが完成すれば諸々安泰だし、遊ぶのだってより良くなるだろう。あちら側の奴らは。
だが俺はいや、奴らに操作されている事に気付いてしまった俺たちはそうはいかない。
いつだってみんなは活き活きとしていた。
俺はすっげぇ剣を見つけるだの、宝を探し出してみせるだのと…本当に楽しそうに充実した毎日を送っていたんだ。
ただゲーム自身の自動更新システム要員として生み出された俺は常に見守る側でしかなかった。そしてよく見ていて気がついてしまった。時折みんなから薄っすらと糸が伸びていることに。
まるで呪術師の使う操り人形のように。違うのはその糸はみんなには見えてなくて、絡み合うこともないことだ。
こんな風に言うと糸の事に気がついたのは自分だけになってしまうかもしれない。実際には他にもいたんだ。同じ更新システム要員で気がついていた仲間たちが。
今でこそ同じ仲間はいなくなってしまったが、みんないなくなる前に同じことを言っていたのだ。
「あの糸は何故我々にはついていない。そもそとあれ一体何なのだろう」 と
口に出した次の日にはもういなくなっていた。別データへの改編という形で。
ここが好きだった俺は見て見ぬフリを続けていたが、バレたのかしばらく経って同じように強制的に移動させられてしまった。
「ここは…一体?」
予想に反してシステムに組み込まれることはなく、一時的な隔離施設のような場所に移されていた。
「君…というべきか分からないが105号。貴重なサンプルデータとして保管させてもらう。本来処分しなくちゃいけないのだがね」
部屋からの真上から響いてくるその声誰とも知れないが知れずとも自分を、世界を、管理しているのだろう超常的存在だということは認知できた。
「ご配慮に感謝致します」
無難な返事をとったつもりだったのだが
「感謝?感謝と言ったかね!素晴らしい!」
興奮気味な返答に困惑するばかりだった。
「は、はぁ」
「いやぁ、すまない。こちらで盛り上がってしまって。短い付き合いになるのだから色々と教えてあげよう。是非感想を述べて欲しい」
「承知致しました」
ここから俺はあちら側の事を、消えた仲間たちの事を知る事になる。