『悪役令嬢』ちゃんと『素朴』ちゃんについて
妹が唐突に会議を始める。それは世界の真実を知る会議。
これは妹と僕の他愛もない日常の一コマである。
そろそろ夕方と言える時間、近所のスーパーへの買い物を大地母神に命じられ、ついでに少し、兄妹のスキンシップもということで、散歩中の妹と僕。 妹も含め、この付近の子が、よく遊ぶとある公園の前で足を止める。
「兄……とうとつだが、私のクラスには悪役令嬢がいる……」
あぁはじまったか……。この切り出し方は妹の独特の言い回しで、この言い方をするときは、あれが始まる前触れだ。
「兄……会議をはじめます……」
ほらな?
「「世界の真実を知る会議を」……だな」
僕の妹は小学一年生、現役の厨二病だ。そんな妹はいつもこんな風に、突然会議を始めるんだ。妹はこれを『せかいのしんじつを知るかいぎ』といっている。
それで妹よ、悪役令嬢とは穏やかではないな。
「うむ、兄……そうなのです、おだやかではないのです」
悪役令嬢というのはあれだ、キャ〇ディーキャン〇ィーにおける、イ〇イザの様なキャラの事を言う。それがクラスにいる。なんだ? たて巻きなのか? ドリルか? さらに高笑いか?
「兄……兄が混乱しているのはわかる。だがほんとうの事」
信じているぞ妹よ、大丈夫だそんな真面目に上目遣いで兄を視なくても、兄は妹の言うことであれば、世界の終焉すら信じる。安心しろ。
「で、妹よ、その悪役令嬢、仮称、イライザちゃんは、どの様に悪役令嬢なのだ?」
妹は小さく頷き話始めた
「兄、なぜイライザ……」
気にするな妹よ、そういうものだ。
「まぁいい兄」
妹の話はこうだった。
父親が会社の社長、なんか派手目なおしゃれ、クラスのおっとり素朴美人に嫌がらせをしている。あと、クラスの人気者の男の子をその子と取り合っている。(あっているのはイライザだけ)これが、クラスの中心的存在となり、今やクラスは、イライザ一派、我関せず一派、素朴ちゃんを守る会一派の三つ巴だというのだ。
「確かに悪役令嬢……だな……」
小学一年生にそんなものが居るのか……妹は無事だろうか……そんな中、いじめられてはいないだろうか……。
「妹よ……」
「兄、私は問題ない、なぜなら」
「なぜなら?」
「私は偉大な魔法使いなので、皆が恐縮して何もしてこない……あ、素朴ちゃんとは仲は良い」
妹よ、それは……はぶら…。
「世界が違うので問題ない、兄……問題はない」
二度言ったということは、大事なことなのか? 妹よ。
イライザか……。陰謀の匂いがするな……。いザというときには俺も過去の封印を解いて、わが妹の助けとならねばならないか……。
「兄、そう、これは陰謀、そして私は、素朴ちゃんを守る騎士になる!」
うん、妹よさっき魔法使いと言っていなかったか?魔法騎士か?
レイ〇ースか? 兄としては緑の眼鏡の子が好みだ。
「兄、これでイライザは悪役令嬢ということが伝わっただろうか」
「うむ……そうだな」
妹の頭を優しくなでる。この小さな体で既に、中小企業の人間関係並みの苦労をしているなんてな。
「妹よ、困ったときは兄を頼れよ」
「……わかった」
沈む夕日で伸びる妹と僕の影、恥ずかしそうに笑う妹。悪役令嬢のいるクラスか……世界はそうそう優しくないな。これもまた真実か……。
「対策……考え様な?」
「うん……」
妹を守るのは俺の役目、いや運命。照れながら微笑む妹のついんてが、頭を撫でる俺の腕に少し当たる。
守りたい、この笑顔!
「あ、兄…これで今日の…」
「かいぎを終えます…だろ?」
妹は僕を見ると、一回大きく瞳を開いた後、嬉しそうに目を細めて笑う。そして僕にも誰にも聞こえないくらい小さい声でそっと言った。
「兄……だいすきです」
このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。
ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病だということ……だったのです。
そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。
そういやイライザ……まさかレギュラー化か?
はいどうも!十四年生です。
第二話いかがでしたか?
本当他愛もない一コマなので、ほっこりしたり笑えたり、ふーんて思えたり、
色々だと思います。今後もふと思いついたとき更新しますので、お気に入りよろしくお願いします。
さて今回の新キャラさんは、イライザちゃんと素朴ちゃん。
イライザ:お父さんが社長、クラスの中心的存在、たて巻きドリル金髪、パパは日本人、ママは金髪の外国の人。クラスで一番人気の男の子が好き。同じ男のが好きな素朴ちゃんを目の敵にしている。(実際は男の子が素朴ちゃんが好き)
素朴ちゃん:素朴で優しくて可愛い子、クラスの女神みたいな子だが、現在はまだその女神性を発揮できていない。庇護欲を駆り立てられるその空気に、クラス内で守る会が発足している。本人はドジで、運動の苦手なだけの普通の子だと思っている。黒髪セミロング、服装は一般的、はにかんで笑う姿は一輪の花を思い浮かべる。