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『乙女のシークレット』について

妹が唐突に会議を始める。それは世界の真実を知る会議。

これは妹と僕の他愛もない日常の一コマである。


秋といえばコレ……そうあの……アレである。

 紅葉咲き、秋紅葉迎える頃、そらにはうろこ雲、イワシ雲と言われる小さな雲たちが西へと急いでいる。


「秋だな……」


 イッツおセンチワールド展開のアンニュイな世界だ。

 そんな中、わが素敵将軍な妹は我が家の一員となって結構立つ黒猫さんと、にゃんにゃんと戯れている。


 うむ、尊い……。

 決して猫に猫と名付けるネーミングセンスを持っているとしてもだ。

 何ならむしろそれすら尊い。


 そんなアンニュイな夕方にこの時期よ聞かれる、あの音が流れてくる。


「い~しや~きいも~……」


 !?


「おいも~おいも~おいも~だ……(ためて~~~~)」


 ガバッ!


「よ~~~~」


 周囲の家の扉が一斉に開く、それにつられてわが妹もその可愛い足に振るブーストがかかったかのような速度で玄関を抜けて外へと走っていく。


 あ、一歩遅れた……急いでいかないとまずい、妹は金を持っていない。


 そう、この音とは、石焼き芋のトラックの流すアレだ。


「あに~~~おにいちゃん! 早く! ダッシュ!! Bで!」


 妹が僕を呼ぶ!

 まるで赤い帽子のひげの配管工のダッシュを強要しながら。

 心で流れる星を手に入れた時の音楽、今兄は無敵だ!


 石焼き芋のトラックに群がる、リビングザデッドなお姉さま達を押しのけ、今まさに先頭で、石焼き芋を手に入れた妹の側に、はせ参じる僕。


「あいよ、毎度!3本な!」


 おじさんに渡される等価交換の代価。大丈夫手も足も持っていかれていない……今回の錬金は成功だ……。兄ちょっと疲れたよ?


 ※


「むふ~」


 お目当ての石焼き芋が3本も入った紙袋を手に持ち、ご満悦な妹。ああ素敵だよ妹、そういうやや欲望に忠実な部分も兄は素敵だって思うよ?


 自宅へと直ぐに戻りテーブルの上に紙袋を置くと、妹は台所に向かう。

 冷蔵庫の中の牛乳が目当てだ。

 なにせ、牛乳といえば、焼き芋に合うベストな飲み物、不動の一位である。妹ならぬ僕も少々気になる。


 しばらくするとグラスに牛乳を入れて妹は戻ってくる。

 うん、兄の分はないよね? 知ってたようん、自分で入れるさ。


 僕が台所で自分の分の牛乳を入れていると、焼き芋、牛乳のコンボを三アタックほど決めた後、妹は右手の手袋を外して五芒星(マジックまだ消えてない)を掲げて右目の前に横ピースで当てた後、いつものアレを高らかに宣言した。


「あに……かいぎをはじめます!」


 今日も妹の会議が始まるようだ。

 妹曰く、世界の真実を知る会議が……。

 あ、因みに今日の妹はオーソドックスなロングストレートである。


「あに……焼き芋は神秘……乙女のスゥィートなアイテム……」

「たしかにな……焼き芋は甘い……そして乙女(年齢不詳含む)のスゥィートなアイテムだな」


 そしてハムっと一口食べて牛乳を飲む妹。可愛いぞ妹、下の猫がおこぼれを狙っているのにひとかけらすら落とさない。その無駄のないフォームに僕はびっくりだよ。


 石焼き芋……。密閉良い気の底に那智黒石などの小石をひき、その上にサツマイモのせて容器の下から加熱。小石から出る遠赤外線により、表皮一ミリ付近で吸収。デンプンなどの分子振動により摩擦熱が熱源になるとか。


「えんせきがいせん……こたつ?」

「うーん妹よちょっとちがう?」


 小首傾げるそのしぐさに僕はもうドッキドッキだよ。むふー。


 まぁなにゃかんやでイモ内部は六十度に達し、デンプンさんは水分を吸収し糊化。イモに含まれるβアミラーゼが、それを加水分解し麦芽糖にかえる。


「ゆえに、甘いのだよ妹」

「あいとじょうねつとがまんのけっしょう……」


 お、今日の妹は饒舌じゃないか~。いいねぇお兄ちゃんそういうのいいよ~うん。


「落ち葉焚きでの焼き芋も捨てがたい」

「すてがたい……」


 だが残念ながら改正廃棄物処理法により、野焼きの禁止や他諸々に寄り現在はなかなか出来ないんだよ。残念だね。風情もあるしいいのにねぇ。


「ざんねん……もぐもぐ……」

「まったく……ごくごく」


 ちなみに、焼き芋になるサツマイモだが、大きく分けて三種類になる。


『しっとり』

『ほくほく』

『ねっとり』


 この三種だ。


 しっとりといえば、シルクスイート。比較的新しい品種で程よい甘さに触感はしっとりしている。


 ほくほくは、鳴門金時、紅あずまだろうか。鳴門金時は中身が綺麗なクリームでの美しい。食感は上品な感じ。紅あずまは昔懐かしき、ザ・焼き芋。お姉さま方よく食べられていたのはこれになるのだろう。


 ねっとりといえば、安納芋。焼き芋を最近スイーツであると言わしめたのがこのイモ。濃厚な蜜はその通り、スイーツになる。そして紅はるか。そんな安納芋よりも甘いんだぜ? という意味をこめられているらしい。その糖度は安納芋の四十度を超えた、五十……いや六十度とにもなるといわれている。メロンの四倍以上の甘さにもなるらしい。


 何はともあれ、確かに石焼き芋は……乙女の神秘アイテムだな。


「うむ、たしかに妹の言ううとおりだな!」

「ん……分かってくれてよかった……」


 妹は食べ終えた指をその下でペロっと舐めて、ごちそうさまというと、テーブルの上に残りのイモを置いて台所へと後片付けをしに行った。その後ろを猫が何手伝いするわけでもないのに、ついていく。


 妹はそっとしゃがんで猫に言う。

「でも、あまり食べすぎちゃだめ……あとでちょっと困るから」

「ニャー」


「ん? どうした~~何か言ったか~?」

 妹が何か言っていたようなので、僕はちょっと大きめな声で妹に声をかける。


「ん……なんでもない……乙女のシークレットだから……」

「お、おう……」


 どうやら本日の会議はこれで終了らしい。このあと、大地母神と魔王が帰ってきてそれぞれ残っていたイモを見つけ食べていた。まぁ元々、この二人の分も入っていたので良しとしようか。


 まぁあれだよ、ようは世界は平和で今日も妹は可愛い! それでいい。それでは、本日の妹と僕の会議を終えます。


「お!(ブフォアァ)」

「あなた!」

「ニャー(オーシークレット……)」


 このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。

 ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病だということ……だったのです。

 そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。


「ん……だから乙女のシークレット……」








はい、またまたお久しぶりでございます。

第十話のお披露目と相成ります。


正直体調はまだ芳しくないのですが、書きたいと思えるときには書かないというわけで、

書いてみました。ネタも降ってきましたしね。


このお話は、本当他愛もない一コマからなので、ほっこりしたり笑えたり、ふーんて思えたり、色々だと思います。

今後も、ふと思いついたとき更新しますので、どうかお気に入りによろしくお願いします。


妹可愛い、いやマジひくわー、イモで妹か? いや待て…… 尊い? 嗚呼尊いさ……。

いいぞ兄もっと頑張れ! などありましたら、是非諸々感想などにお願いします。


不定期にも程がありますが、この先またこの二人を見たいなぁと思われる方が居ましたら、何卒、下記のポイントなどにて応援いただければ幸いです。

それではまた近いうちに……。


リビングザデッドなお姉さま達:例の掛け声だけにとどまらず、行列になり、ダッシュをし、強奪、数々の戦いを乗り越えた猛者、もしくはその予備軍のこと。うっかり巻きこまれると、死を覚悟せねばならない……かもね。

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