王様と対面しました
オルフェイ領を出発して一か月が経った頃、私はようやく王都に辿り着いた。
通常、馬車でくれば半月でつくが、あいにく家の領には一台しかなく、新しく買うといってもオルフェイ領では作り手が少なく、完成までに早くて一か月かかるとのことで、ならば歩いたほうが早いとなり、徒歩で来たのだ。
・・・歩けば宿代くらいで済むし、食料は途中で魔物を狩れば全く問題なかったからこっちの方が安上がりだよね。
通常の二倍くらいの時間をかけて王都についた私はまずは今夜の宿を探すことにした。
宿を探し始めたのは良かったが、どこも高い。
普通の街だと一泊250リンなのに、王都では一泊650リンするというのだ。通常の約2.5倍である。
高すぎる。こんなにするんだったらどこかで野宿でもした方がいい気もするが、久しぶりにベッドで寝たい気もする。なんせここ10日間くらい野宿だったのだ。いくら若いとはいえ、そろそろ体が痛いし、布団が恋しい。
迷った末、やはり宿をとることにした。
部屋に案内された私は、荷物を置いて王様への謁見の申し込みをし、その日が来るのを待った。
返事は翌日には届いた。
意外に早くて驚いたが、中身を見てもっと驚いた。
紙には本日の朝10時に王宮へ参られよ。と書いてあったのだ。
今は朝の8時。後2時間で準備して王宮に行かなければならない。
(朝食を食べられないじゃないか!!)
仕方がないので、急いで準備をして、宿を出る。
ドレスでは上手く歩けない上、王様に会うまでに汚したら替えがない。仕方なく馬車を借り、王宮まで送ってもらった。
王宮の門の前に来ると、ここまでのお金を払って馬車を降りた。
門の近くまで歩いて行くと、門番の人に止められた。
「娘、ここは王宮だ。一般市民が来て良いところではない。」
「失礼いたしました。私はオルフェイ領領主の娘、リリアン・オルフェイと申します。本日は王様との謁見のために参りました。」
そういうと門番の人は胡散臭そうにこちらを見て、
「確かにその話は聞いているが・・・お前がオルフェイ領領主の娘という証拠はあるか?」
確かに護衛の一人もつけず、肩にリスを乗せてオルフェイ領領主の娘と言っても説得力はないだろう。私でも疑うもの。
私は胸にかかっている家紋入りのネックレスを見せると門番の人は少し青ざめ、
「も、申し訳ございません。すぐに報告してまいります。」
頭を勢いよく下げたと思ったら、走って行ってしまった。
しばらくそこで待っていると、髪の毛が真っ白なおじいさんが出てきて
「先ほどは門番が大変失礼いたしました。私は執事のバーナーと申します。ささ、王がお待ちですのでこちらにどうぞ」
と案内される。
私は玉座の間に通され、王様と対面した。
先ずは失礼が無いようにドレスの裾をつまんで礼をする。
「お初にお目にかかります。私はオルフェイ領領主の娘リリアン・オルフェイと申します。本日はお時間を頂き誠にー・・・」
「あぁ、よいよい。堅苦しい挨拶は無くてよい。」
私はびっくりして王様の顔を見つめてしまった。
王様は赤茶色の髪を後ろに一つでまとめ、瞳は金色。まるで狼のような人だと思った。服装は王というにはあまりにフランクな、冒険者といった方がしっくりくるような格好で玉座に座っていた。年齢は40代半ばくらい。お爺様と同じくらいの歳だ。
そんな王様は固まっている私を見ながら
「お前がサイラスの孫か。ジジイに似てない可愛い顔をしておるな。ガハハハハハ」
と豪快に笑い、
「ところで、兵はどうした?城壁の門番からも援軍が来たなどという報告は上がっておらんし、お前が来ていたというのも先駆けが来て初めて知ったくらいだ。まさか・・・サイラスは兵を出さなかったのか!?」
といきなり聞かれたくないところを聞いてきた。




