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漂う気持ち

 午後の優しい風がナターシャの頬を撫でた。

王族専用の庭園にひとり残されたナターシャは、ぼんやりとベンチに座りながら流れていく雲を眺めていた。


 いったい、何がいけなかったんだろう・・・


 幼い頃からずっとマラン王子の婚約者としてふさわしくなるべく努力を重ねてきた。もともと器用でないナターシャにとって、完璧な淑女となるべき訓練は簡単な物ではなかった。

 婚約者として彼に恥をかかせてはならないと言う気持ちが、ナターシャを奮い立たせてきたのだ。


 もともと母親同士が仲が良いこともあって、ナターシャの父であるオーモン公爵はマラン王子の婚約者にナターシャをねじ込んだ。


 このシセ王国には3人の王子がいる。20歳の王太子ユーリ、18歳のマラン、末っ子のアルドは16歳だ。

 王太子は幼い頃から隣国の王女と婚約しており、娘にもっとも位の高い婿をと考えた場合第二王子、第三王子が標的となる。

 第二王子マランの婚約者におさまった娘を見て、父オーモン公爵は鼻高々だった。そういった親の期待も背負いナターシャは日々努力してきた。


 ああ、父様になんて言おう。絶対怒られるわね。


 簡単には諦めそうにない父親を想像して、げんなりする。


 そういえば、王妃様にはなんてお伝えしようかしら。


 マラン王子の母君であるアデライード王妃は、親友の娘であるナターシャを幼いときから可愛がってくれていた。


 王妃様に泣きついてみようかしら。


 いや、だめだ。王妃様に泣きついたところで、マラン王子の意思は変わらないはずだ。


 幼いときから、穏やかで優しくて植物好きなマラン王子だが、一度怒らせると簡単には怒りを収めてはくれない。婚約破棄され、厚かましく追いすがった上に、マラン王子の軽蔑を含んだ目で一睨みされることを想像しただけでナターシャは死んでしまいたい心持ちになる。


 もう打つ手はないものかしら。


 こんな天気のいい中、花咲乱れる庭園のベンチに座っていると先程のマラン王子の言葉が夢のように思えてくる。


「ナターシャ、こんなところにいたのね」


 

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