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警備員コウジの異世界転生  作者: タカハラ
1章 ヴィジョン王国編
3/3

2話 vs盗賊

「アニキィ、こいつら貴族ですぜぇ。」

「おう、弟よ。今晩はうまい酒がのめそうだぜ。」


 声が近くから聞こえてきたため足音を殺し、木陰から様子を伺うと脚を切られ倒れている荷馬車と執事のような老紳士、それと金色の、腰まで届きそうなくらい長い髪をした女の子を前に、頭にバンダナを巻いたチビとデブの武器を持った2人のゴロツキがいた。どうやら盗賊の類のようだ。


「あの、すみません。金目のものは全て渡しますのでどうか私達を見逃しては下さいませんでしょうか。」


 執事が恐る恐る盗賊に対し言ったがチビの方が笑った。


「見逃すぅ?そんなわけないじゃなぁい。襲ったモノは全て俺っち達のモノ。泣く子も黙るブラン兄弟とは俺たちのことだぜぇ?」


 まるで歌舞伎のような動きをしながら言った。ブラン兄弟の名前を聞いた瞬間、執事の顔は青くなった。


「まさか・・・最近ギルドに討伐対象となったあのブラン兄弟ですと・・・!?」


「そうだ。だが安心しろ、お前達を殺しはしない。まぁ奴隷商に売るからその先のことを考えたら今ここで死ぬ方がいいかもしれねぇがなぁ。」


 デブの言葉に執事の顔はより青くなった。


「私のことはどうとしても構いません!ですが!ですがお嬢様だけはどうか見逃していただけないでしょうか!」


「んなこたぁ無理に決まってんじゃん。女は高値で売れるんだからさぁ。しかもよく見るとすんげぇ上玉じゃねぇか。売る前に一発かましてからにするか。」


 チビがゲラゲラと笑った。


「なんとか!そこをなんとか!どうかお願いします!」


「うるせぇ!今すぐここでブッ殺されてぇか!?」


 すがる執事をチビは殴り飛ばした。転がる執事に女の子が駆け寄った。女の子が揺さぶるがどうやら気絶しているようだ。


「もうやめて!大人しく従うからこれ以上じいやを傷つけないで!」


 女の子はそう言いうなだれた。


「そうだ、最初からそうすれば良かったんだよ。ガハハハハハ。」


「じゃあ大人しく縄で縛られてもらうぜぇ。」


 チビが縄を持ちいやらしい顔しながら女の子に近づいていく。


(これはマズイな。このままじゃああの女の子達が危ない。助けに行くか!)


 縄を女の子の手に回そうとしたその時、


「ちょっと待ったぁ!!」


 突如として現れた人間に驚く盗賊と女の子。


「これ以上の悪事は見逃せない!投降しろ!」


「んだテメェは。このブラン兄弟相手に勝てると思ってんのか?あぁん?」


 勢いで飛び出て来てしまったができるか?とりあえず鑑定をしてみよう。


 ――――――――――――――――――――――――

 イワン ブラン 32歳 男 レベル 21

 職業:盗賊

 体力:80

 魔力:10

 筋力:80

 敏捷:30

 耐久:100

 知力:10

 スキル

 ――――――――――――――――――――――――


 ――――――――――――――――――――――――

 イスカ ブラン 28歳 男 レベル 18

 職業:盗賊

 体力:60

 魔力:10

 筋力:60

 敏捷:50

 耐久:70

 知力:10

 スキル

 ――――――――――――――――――――――――

 スキルは2人ともないようだ。レベルは俺よりも全然上だが能力値がかなり低い。しかし相手は武器を持った2人。なるべく個別撃破が望ましいか。


「ブランなのかモンブランなのかは知らんがさっさとかかってこいよチビ。」


「貴様ァ!俺っちのことをチビって言いやがったな!そんなに死にたきゃすぐに殺してやるよ!死ね!」


 挑発に乗ったチビがナイフを右手に持って突っ込んでくる。とりあえず作戦通り。さて、実践はこれが初めてだが普段通りやれば問題ないだろう。やるか。


 チビとの距離およそ3m。

 警戒棒を右手に持って足を肩幅間隔に広げる。


「死ねぇー!」


 距離およそ1m。チビが間合いに入ってくる。


 右足を前に出して半身状態になりナイフを避ける。その際右手を左側に持っていく。


「なにぃ!避けやがっただと!」

「遅い!くらえ、下段打ち!」


 右足を前に踏み込み、スナップを効かせながら警戒棒でチビの右肘を打つ。ゴキィッとすごい音がしたがすかさず二撃目を左膝に打ち込む。


「あああああああぁぁぁぁ!イテェよおおぉぉぉぉ!ああアアァァァ!」


 地面に転びながら泣き叫ぶチビ。鉄をも砕く打ち込みにチビの右肘と左膝は粉砕した。


「まぁ本来は膝じゃなくてももを打つんだがこの状況だ。勘弁してくれ。お詫びと言ってはなんだが眠らせてやるからさ。」


【非殺傷攻撃】をオンにしてから警戒棒でチビの頭部を目掛けて振り下ろす。ゴォン!と鈍い音はなったがへこむわけでも血が出るわけでもなくチビは静まった。呼吸はしているようだからどうやら生きているらしい。やはり魔力が無くなれば気絶するってことだな。


「貴様ァ!よくも我が弟を!許さんぞ!」


「許すも何もそもそもあんた達がそこの女の子達を襲ったことが原因だろ?」


「うるさい!弟は油断したようだがそんな棒1本で俺様に勝てると思うなよ!死ねぇい!」


 剣を持って突撃してくるデブ。しかし浩二は至って冷静だ。


 よく見るとあの剣相当ボロボロだな。なら打ち合ってみるか。


 ガキィン!


 剣と警戒棒が打ち合う。しかしその瞬間、剣がボキィン!と折れた。


「何ぃ!俺様の剣が折れるだトォ!!」


「そんななまくらな剣じゃ俺のポリスバトンにはかなわないぜ。じゃあな。」


 驚くデブの後ろに回り込み首元に警戒棒を振り下ろす。

 グシャアと音がして倒れるデブ。


 こうして、浩二の初めての戦いは終わった。



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