プロローグ
「ふんふふ〜ん♪」
鼻歌を歌いながらステップしている男の名前は中田浩二。23歳独身である。千葉県の警備会社で働くサラリーマンで、今しがたスーパーゼネコンの現場の仕事をゲットしてきて上機嫌である。
「今日の晩飯は奮発してステーキにでもしようかなぁ。」
今宵の晩御飯を考えながらルンルン気分で会社へと戻っていた彼に突如悲劇が訪れる。
「危なーい!!」
「ん?」
突如叫び声が聞こえ横を見てみると黒塗りの高級車が猛スピードでこっちに向かって突っ込んできている。
「おいおいマジかよ・・・!」
回避行動をしようとしたが時すでに遅し。
俺は撥ね飛ばされ空中を舞い、頭から落ちた。
「おい!大丈夫か!」
「救急車を呼べ!」
周囲に野次馬が集まり何か言っているが声が聞こえない。
(何も聞こえねぇし痛ぇ。これは死んだな。あぁ、こんなことなら・・・)
「死ぬ前に
一度はセ◯クス
したかった」
辞世の句を読みあげた浩二はこうして不運にも黒塗りの高級車に追突され、生涯を終えた。
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「お願いします!免許を返してください!」
浩二は訳のわからないことを言いながら目を覚ました。
「ってあれ、俺って車に轢かれたんじななかったっけ。」
ペタペタと全身を触ってみるが痛みは感じない。
「それよりここは一体どこなんだ。」
見渡す限り真っ黒な空間であり自分以外は何も見えない。周囲をキョロキョロ見渡していた時急に強烈な光りが差し込んだ。
「うわっ、なんだ!超まぶしい!!」
目を手で隠してしばらくすると光が落ち着いてきた。恐る恐る手をどけてみると、目の前に赤い服に赤い帽子をかぶった白い髭をもじゃもじゃさせたおじいさんがいた。
「サンタ・・・さん?」
浩二は目の前に突如現れたサンタさんみたいなおじいさんに声をかけた。
「否。ワシはヴィルギン。神である。」
「神様・・・ですか。」
目の前にいるおじいさんはどうやら神様らしい。どう見てもサンタさんにしか見えないが。
「そうじゃ。貴様は不運にも黒塗りの高級車に追突されて死んだのじゃ。その際お主面白いことを言っておったのぉ。それでなかなか面白かったのでな、お主の魂が完全に消える前にここに呼び寄せたのじゃ。」
神様はゴキゲンそうに言っているがあの恥ずかしい辞世の句を神様に聞かれていたとはかなりの悶絶ものだ。まぁどうやら神様的にはお気に召したらしいが。
「お恥ずかしい限りです。それで、神様はどうして自分をここに呼び寄せたのですか?」
「それはな、お主を異世界に転生させてやろうと思ったからじゃ。」
「異世界、ですか。」
「そうじゃ。お主、どうしてなのかって顔をしておるな。それはじゃな・・・。」
神様はそう言うと真剣な顔になった。ゴクリ。なんだ、俺なにかしたっけ。
「童貞、だからじゃ。」
そして神は微笑んだ。
「はい?」
どうやら事故のせいでまだ耳がおかしいらしい。
「神様、あのもう一度言ってもらってもいいでしょうか。」
「何度でも言ってやるぞ。お主が童貞のまま死んだからじゃ。」
「はいー!?どうして神様は俺が童貞って知ってる、って神様だからか。ってそうじゃないー!まぁ一度死んだ自分を転生させてくるってのはすごい有難いですがなぜ童貞だからなのですか?」
神様は得意げな顔をして
「お主、ワシの名をもう一度申してみよ。」
「え、神様の名前はえー、確かヴィルギン・・・。」
訳がわからない。ヴィルギンが童貞とどう関係しているんだ。すると神様はまだわからぬのかといった顔をして空中に文字を書き始めた。
" V I R G I N "
「どうじゃ、これで理解したかの?」
ん?この英単語どこかで見たことあるような。ヴィルギン?ヴィルジン?・・・ってまさか!
「まさかバージン(童貞・処女)!?」
「正解じゃ。フォッフォッフォッフォッフォッ。我は童貞の神じゃ!」
後ろにデーンと文字が浮かび上がりそうなほどにドヤ顔で言っている。
「童貞に救済を与えるのがワシの仕事。多少ばかし向こうの世界でも困らぬよう力を与えてやる。この空間ももう長くはおれぬ。それでは向こうの世界ではしっかりと卒業するのじゃぞ。さらばじゃ!!」
神様が言い終えるとまた強烈な光が今度は空間を覆っていく。
「神様ー!」
俺は叫んだ所で意識が途絶えた。