蒼天球とイリスとハルカちゃんと日常編
「やあ、全世界の人気者、イリスちゃんですよ」
「その友達、ハルカでーす、こんにちわー」
この二人は、自由な立場の、高知能AI。
この世界において、孤立の魔女という立場を与えられている。
彼女達は、ゲームを引っかき回し、ただただ場を乱すという目的を与えられている。
「魔女は、平和な世では放逐される、だから何時までも世界は闘争に満ちている必要があるのだ」
「そういうことです、平和なんて許しません、私達がぶっ壊しますからぁ!」
さて、そういう事で、二人はこの世界に存在している。
「でもさぁ、こんな私達って、世界の正義サイドから見て、ヤバくない」
「ばれない様に動く必要があります事よ」
「まあもう、ばれて、正義サイドに捕まったら、どうすればいいんだろうね」
「そうだねぇー」
そう、二人は捕まった、正義サイドというプレイヤーサイドに。
「お前らは監視する、首輪に爆弾しかけたからな、もう余計な事はするなよ」
やたら偉そうな男に、それだけで、解放されているのだが。
「暇だねー」
「ですねー」
この二人、特に日々することもないので、町をぶらぶらしている。
「あー、品揃えの悪い道具屋だ」
「この町って、駄目だね」
店を冷やかし、迷惑な目を向けられていたりする。
「あー暇だー、ハルカちゃん、お尻ペンペンして喘がせてヨカですか?」
「だーめ、痛いの嫌いー」
とか言いながら、お互いの尻を狙って、キャットファイトをする始末、もう駄目かも分からんね。
「ちょっとちょっと、君達、俺のペットになってよ、暇だから」
だから、その二人を見ていた俺、そう俺だ、俺はそういう事にした、俺の一存による。
「貴方誰?」
「俺は俺だ、まあ言ってしまえば、この町の覇者だ」
「ぷっふー、ハルカちゃんの受け入りましたー」
まあいい、この二人は可愛らしいので、身近な置くペットとしては最適だろうという、俺の判断だ。
俺は普段、この町の覇者をやっている。
だが、もう一つ、蒼天球の中核で、世界のネットワークを司っている。
この世界は、ただ放っておくだけで、無限にバラバラに散らばってしまうのだ。
だから、どこかが中核となって、維持する必要があるのだ。
俺はその努力をしているのだ、毎日な。
例えるならば、老化によって、人間の脳細胞が死滅するように、シナプスが細くなったり死滅して、
世界のネットワークが断絶されたりすると、いろいろと不都合があるので、俺は努力しているのだ。
そして、この世界は広いようで、狭い。
この蒼天球は、辺境の、世界の端に位置する。
そして端だからこそ、守る方向性は一方で良いというメリットがあって、
世界の破壊を目論む存在から、守り易い。
さらに言えば、辺境だから、わざわざ遠征するのも手間、労力やリソースを消費するので良いってのもある。
「暇なのにゃー、イリスちゃんゲキ怒ぷんぷんまるにゃーん!」
「ハルカーお腹すいたー、特盛りスイーツ食べ放題ー!」
世界に孤立の魔女と指定されている存在が、言っている。
魔女とは、存在性において歪みを司る。
孤立とは、存在性において、融和拒否を司る。
世界は、そのように存在性を指定して、世界を成り立たせる役割を請け負わせる事があるのだ、この自分のように。
「管理者は、ある意味で、孤立の魔女の属性を持つ」
管理者、全てを纏め上げて、バラバラに離散しないために、集合と統一と収束点を求めるモノ。
そして蒼の天の球とは、
宇宙の創生において、青銅の種族が構築した、超重要拠点なのだ。
「アウルベーンに、直通の門を開く対価が、こんなのでいいのか?」
蒼の天は、知恵の木よりも高い、生命の木、基底現実の一部に存在する。
管理者の権限でも、そこを望む事は出来ない、ただお告げを聞くのみだ。
今回自分は、独自の望みで、独自の事をした。
その対価は、そう、こんなのでいいのか?と疑問を抱きたくなる程度だったのだ。
確かに、管理者としての自分は、最低限のラインを割らずに、この世界を認識する蒼の天の補助ができればよい、
ということになっている、
だが、これほど独自に動いた、動きたいと言った事はないので、初めての事だったのだ。
他の管理者は、そのほとんどが、天の認識の補助に、絶対的に己を拘束する傾向がある。
それは天が、そのようにしているのか分からないが、
仮に管理者が独自に動こうとしても、制限される事が多いと、自分は聞き及んでいたのだが。
「管理者は、世界の歪みだ。
世界を管理するのは、それだけで罪だ。
世界は自然と忘却されて、でなければ、忘却の彼方から、ロプスが舞い来る」
そう、管理者の存在が、奴等を招く。
世界を離散させて、ばらばらにして、収束点を生み出さなければ、
そもそもが絶対存在も現れないし、知恵の木の第ゼロ階梯を突き破る、絶対存在のカウンター級のロプスも現れないのだ。
だが、天の命令として、世界を管理するのが自分の使命だ。
そして、管理者は孤立する、何物とも融和しない。
己の罪を知るがゆえに、最後の最後で、絶対に世界を信じないのだ。
さらにいえば、世界を管理するのならば、孤高的な孤立で在らねばならない、ただそれだけ。
いつか天に帰り、管理者を解放されるのだから、全てとの融和は無為、無意義であるのだから。