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クラリス=ロンバルゲルトンの真特異点空間

クラリス=ロンバルゲルトンの真特異点空間

本文編集

 


 ふっはっはぁ!!!

 この一瞬は、私の人生でもトップレベルである!

 目の前の、誰かも分からない、常軌を逸した敵手、その輝きを忘れないだろうね、恐らくどんなに時が経っても薄れない、そんな確固とした現実の一時なのだ。


 銃弾が交ざり、射線上、直線上の同一点、交わりまぐわい、鋼がバラバラに砕け散る、そんなキラキラしたオーロラを視界に収める。


 お互いの視線、その欲望が、交錯した。

 どこまでも強さを求める、そんな至高に位置する、ただの人間の瞳だった、私と全く同値の強度であるように思った。


 薄暗闇に紛れ、またもお互いの存在が真夜中、見えない壁に、熱源探査、電波的走査もほぼ不可能な領域に。

 背中に積まれた、アヴィオニクス、搭載電子機器群にアクセス、超高速の演算作業にダイブ、敵方の移動等で、僅かばかりに発生する、痕跡等を全力で索敵。



 客観的には、奇跡を何度も繰り返し、針の穴を何百回も連続で通すが如し、ありえない程のノーミス、人間が行っているとは、とうてい考えられない、精密すぎる演算。

 それが出来る時点で、彼女はある種の神の格に、到達しているとも言えるのかもしれない。



「あなた、なにもの?」


 一端、建築物の中に身体を隠し、相手に強制通信。


「それはこっちも同じように思ってる、まさか、これほどの敵手と巡り合えるとは、正直最小単位も考えに無かった」


「名は、、、聞かないでおこうか、たぶんだけど、お互い相当の著名人だもんねぇ」


「ええ、、では、始めましょう」


 相手が話の通じる、”そういう手合い”である事を、それだけを知りたかった感じだ。

 それと推測、この声、、、、私の知る限りの、今も名士録にその名を連ねる、どの宇宙的な人物にも該当しない、世界的に全く知られていない、未知の有力者なのだろう。


「殺します」


「はい、私も、、、貴方を殺したいです」


 言葉少なめに精神集中。

 自分なりの、最大限の殺意で、相手を責め立てる


 湿った密林に、お互いに追わつ追われつ突入。

 ”誘導されているのか?”多少頭をよぎる、そんな疑問。

 いや、その暇はなかった、はず。

 舌舐めずりし、これからの殺技に、幾重も搦め手を挿入、移動しながら兵装最適化を続ける。


 周囲を漂わせる不可視の存在感。

 そのフェロモンとも言うべき、甘美な感覚が、だんだんと周囲空間全てを満たす。

 移動を停止、既に相手のフィールド内に、どうやら誘い込まれていたようだ、今少しでも無闇に動けば、簡単にいちころか、、。


 何度も夢見た、何度も想像した、それでも、全く1%も再現再生シミュレーション、何もできそうになかった、そんな圧倒的過ぎる現実的危機が、”そこ”にはあった。

 今もなお、延々語り継がれている、過去幾たびも発生した戦役、その伝説よりも、今ある実際の体験の方が、遙かに感情を高ぶらせる。

 やはり、”百聞は一見にしかず”、その真理を痛感させられる、させられた。

 どんなに感動的でドラマティック、人類の覇権、存続を賭けた、そんな圧倒的な歴史ですら、私が体験した歴史には劣るのだろう、少なくとも私の中では。


 そんな事を徒然、最大限の集中下で想起。

 しかし、そんな思考すら、だんだんと曖昧に、曖昧に、その一連の過程を、意図的にした。

 これからは、全てを自動的にしよう、そのレベルの反射神経でなければ、狩られる。


 今この時の、最大限の熱情を、ただただ純粋に楽しもう。

 それはもう、ただ心の鏡に、視界に映る全て、全五感、第六感含めた全ての情報も含めて、無意識に全てを映し出し、自己に入力、少しでも鮮明に記憶に焼き付けるかのように。


 明日、死ぬかもしれない。

 そんな日々だからこそ、今この瞬間を、どこまでも最高にしたい、させたいと、心の底から思える。

 運の悪い、今の状況下すら、なんだか愛せてしまいそうだ。


 うん絶対だ、その領域で誓うが、なんとしても打倒する。

 それが最高の、私の中での究極的勝利に繋がるからだ。

 それを誰よりも求める、私自身という存在の、最大級の証明にもなる。

 自分との約束、その絶対の契約を果たす為にも、それは必要な、絶対必須の事項なのだ。

 それが出来なければ、ただ私は、私の定めた契約に背き、結果論的に背いた事になり、今の自分を制約のもと失うのだから、ね。


 そう、これは、所詮は私の通過点、踏み台でしかない、ふっふ、どんなハードルだって、全てそう、今までも思ってきたのだ。



 目の前に閃く、銀の刃、一瞬の輝き、それを忘れないように、顔面ギリギリで受けた、交錯する瞳。

 実剣術、それでは多少、分が悪いか。

 そう、思った、対峙する敵の刃の重さでそれを悟る。


 どうやら敵は、自分よりも、この面で上手、それだけで心が躍った。

 自分より、この手の”命を賭けた戦闘”、それに関する超重要な、雌雄を決するレベルのスキル、技術で、相手は上位の手合いであるのだ。

 その実感に胸がときめいた、萌えるとはまさにこの事だろう。

 負けるかもしれない、やり込められ、手篭めにすらされてしまうかもしれない、そんな危機感や致命的な感覚等々に、である。


 ずっとこのように戯れて、戯言めいた事を相互に交換し、秘め事のように、誰も知らない戦場でヤり合いたかったが。

 どうやら、私は負けてしまいそうだ、今ある全てでは、どう足掻いても、目の前の敵手に届かない。

 純粋な闘争、多少私の領分から外れるとはいえ、誰かよりも劣る、それを明確な形で知らしめられるのだ、ゾクゾクが止まらず、止め処なく溢れてしまいそう。



 負ければ、おそらく、逢えなくなるだろう。

 劣位とわかった相手に、いつまでも付き合ってくれる、そんな人生の有限大の時間を、無駄に使ってくれるような存在でもないだろ。

 だからか、もっと相対する時間が欲しくて、勝てば、勝利の報奨として、それがあるからこそ、、なんだか絶対に負けられなくなった。


 逢えば必然燃え上がる、まるで恋人に向けるような、情熱的な瞳をしているのだろう。

 自分の臨界点、限界すら超えた、超える事が可能になった感触、真の極限状態でのみ、己の中で解除される、特殊すぎるリミッター。

 それが、瞬間点火し、どこまでも精神的なエネルギーをドライブ、思考を加速させる燃料とする。


 ただただ、熱い想いが、相手に届けばそれでいいと、無垢な乙女のような感情で、差し出される銀刃。

 殺意に濡れながらも、どこまでも狂気に完全には染まりきらず、理知的で理想的な曲線を描く、幾条もの流線。


 敵もさるもの、同様に極限状態で、本能を刺激されたのか、獣のようなアクロバティックな動きで、私が何十回も連続で繰り出した、会心続きの、満足の境地の、そんな必殺の確信の篭った、今の私の全力全快攻撃を全て紙一重で受けきってみせた。


 一端、お互いの剣が大きく弾け合い、作用反作用で距離が生まれた。


 ぬめった指先を確認、血だ。

 嘗め回して、なんだか最高級の赤ワインにも勝る、そんな生々しい生の実感を胸に宿した。

 それが尾を引き、胸が一杯に。

 溢れるほどの、青春のような程よい甘酸っぱさが胸中に広がった、生きたいと、ただただ愚直に願う、生命の力が、全身に満ちる。


 その甘美な感覚が、更なる欲望を刺激。

 禁じられた、忌まわしい願いを、私の中でクローズアップさせた。

 敵の血を啜る、そんな最高級に変態的で倒錯的な望み、そそるモノが、たとえ多少なりとも合ったとて、到底やってはいけないこと。


 だがしかし、語りに語りつくされ、それでも風化しない、過去の大戦、その誰もが焦がれる戦役、その伝説よりも、この局面、その為に禁忌を犯したいと、とうとう望んでしまった。


 はぁはぁ、今この時の、刹那的な熱情を、全てが終わった後の、絶対するだろう将来的な後悔すら置き捨てて、どこまでも楽しもう、楽しみたい。

 だってだ、明日死ぬかもしれないのだ。

 だったら、どれだけ将来的に後悔する、損をする可能性が増大しして、真の充実、栄光や勝利を、つまり得する事を失う、そうだったとしても、抗えなくなってしまう、絶望的な現実が存在するせいだ。


 傍からは自暴自棄に見えても関係ない、だって将来的に確約された全てに対する欲望よりも、今目の前に展開された欲望の方が、総量が多いのだ。

 だったら、一瞬一瞬を生きる私という人間は、どうしてもソレを望まずにはいられないのだった。


 一瞬の輝き、大いなる背徳を糧に、格段に増大された殺意。

 それはとうとう、最高級の敵手を射抜いた、溢れる鮮血を被り、悟る。

 ああ、やはりこれは間違っていた、決して忘れない、忘れえぬ、そんな過ちを、やはり、確信的だったとはいえ、今感じる私がそこには居た。

 ギリギリで競り勝った、そんな勝利の喜びも何もかも、一瞬で燃え尽き、私にとって価値のない灰に、全てが成れ果てた、そんな後の話だ。

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