1・ゲンチョウカヤ‐12話‐コンバットスペースフェアリー!イリス編!第一話!最前線先端!日常風景?!
「レッツゴォーフィヴァターイムゥ~♪あふぁあ♪!!!」
今日も今日とで田辺イリスは元気一杯だなぁ!!
今日はいつものFPSと趣向を変え場所を変え、コンバットスペースフェアリーという、昔からあるオンラインVRゲームをやっている。
今はその宇宙戦艦の内部、沢山の用途の自販機が置いてある休憩上のような場所のベンチで俺は座り、イリスはリズム良く刻み踊っている。
全くいつもいつも綺麗だなぁ!奴の緑髪と緑の爛々と輝く瞳はいつも俺を無限大に熱くさせる。
なんだか電波な雰囲気をぎゅんぎゅん感じさせて、見てるだけで俺まで無限にテンションが上がって、毎日頑張ろうと生きようと、人生を楽しくする。奴風に言うなら優秀なゲーム要素として機能しているのだぁ!
「イツキぃ!楽しいなぁ!どうよぉ!この最高なビートは!痺れるよぉ!!!♪」
意味分からんが、なんだ? 奴にだけ電波な何かが宇宙のどこかから送信されているのだろうか?俺には受け取れないのが心底残念無念で何やらかんやら。
「どうした?イリス?お前電波受けてるなぁ!」
「うん♪今日は凄いよぉー!てか!なんでイツキはBGMオフにしてんのぉ!!ありえないでしょうがぁ!オンにしてよ!!はやくぅ!!」
そう言って、なんか電波受信中の怖い人はベンチに座る俺に勢い良く飛び掛ってきた、たぁ!!なんだぁ!!!
そのままくるくるベンチから転げ落ちて、俺はイリスと揉みくちゃになって固い床に腰を打ちつけ仰向けに倒れる、イリスは俺を下敷きにする形で全くの無傷、俺の胸ポケットの端末を弄くっている。
はぁ、なんだ。
肉体的コミュニケーションは餓鬼の内は他人との心の交流を真に近づける為とかで絶対必須だぁあ!!とか凄い剣幕で学校の熱血先生が言っていた気がするが、こいつは今だにそういうのが抜群で必要な精神的に幼稚でしかたない。
というよりも、精神年齢が12,3歳で止まった、というよりもいつまでも子供でいたい痛い奴何だわ、たぶんな。嫌いじゃないがこういう実害を与えてくる所は玉に瑕だ。
まあ美少女にこういう肉体コミュニケーションされるのは嫌じゃないが、もっと優しく痛くない感じにして欲しい。大事な腰が使い物にならなくなったら困るのだ、いろいろな意味で。
「よぉっ~し♪これで準備完了!おどるぅかぁ!イツキ!!」
胸の端末を俺の胸ポケットに戻すイリス。なんだか耳に直接響くような電波の過ぎるソング、うわぁ~頭が侵食されるぅ!!
BGMがオンにされ、宇宙戦艦の何処にもない音源から歌が流れ出す。
更にイリスはムードとかテンションを上げる為に、壁面の端末を操作し部屋を薄暗くからちょっと明るくする。
これはあれだよ。
昼も夜もない宇宙戦艦内を照明効果によって演出しようとする、昼は明るく夜は薄暗く、ちなみに今はリアルの時間帯で深夜な、ちょっと眠たくもあるのにこんなテンションに付き合いきれるかダボハゼがぁ!
「無理だ!俺には無理じゃ!踊れるわけないだろぉ!やめろぉーー!!!」
イリスは無理矢理俺の両腕を引っつかみ立たせて、そのまま振り回すようにフォークダンスらしき変な真似をさせる。
「なんだぁ!イツキ!元気ないなぁ!体力つけようよぉ!もっと私と肩を並べる遊びマスタぁーになるんだぁ!」
そんな意味の掴みかねる事を言う。
大抵常軌を逸した奴は変態的な能力を所持し、更に電波なコイツは周囲をそれに合わせようとする。
更に言うと俺にだけはその傾向に容赦も拍車もない、子供のようにいつもいつもあそんでぇあそんでぇ!!とせがみまくってくる。
俺も出来るだけコイツに合わせてやりたいし、合わせると常軌を逸して楽しいんだが。残念ながら俺は常人を逸することが困難な凡夫。
とてもじゃないが常時こいつとフィバァー出来ない、もう昼からずっとこの調子で遊んでんだ、そろそろ俺の疲れとかその他もろもろ察して欲しい。
「何をしけた顔してるんだい?元気出して行こうよぉ!」
てかこいつ、踊りながらゲームやってらぁマジでスゲエなぁ!!
しかもそれこのゲームの操作端末じゃんかぁ!
更に言うならこの戦艦を単独で操作し、周辺の護衛艦とかも独立AI簡易操作で支持を出してるし、戦場の重要な戦線を片手間に引き受けてんじゃねぇ。そして俺がそれら全て知らないようにやる意味は何だと問いたい、小一時間問い詰めたい。
そういうあれころを端末のBGMをオフにする過程で知った。
今この船は悪帝軍との正面、もっとも熱い戦場であるはずの領域を任された最新鋭艦隊軍の一部らしい。
第四艦隊司令幕僚本部の下請け兼戦場における便利屋ね、配属先からそれを知る。
俺達はこのゲーム内で東側に対する西側、そういう分類の国家領域が配布する広域治安維持免許取得のプレイヤーだ。
また俺達は個人で戦艦とか持ってるが、それが非常識で可笑しい事を最初に説明しとく必要があるかね。
それは理由が大きく分けると二つ、もっと細かく分けるとキリがないので省略。
まずコントロールにリアルの乗員ベースで人員を必要とするため、まあ最低限でも優秀なオペレーター、って言うのか?まあプレイヤーだよゲームのゲーム、リアルでもその手の事が出来るからあんまプレイヤーって印象は薄いが。それが大体百人位。
第二に戦艦は単価が高すぎる、個人が遊びで持てる額じゃない。普通は共同出資で所持するか国家からのレンタル品であることが普通だが。
こいつは個人で持ってしまっている、ゲーム内商売やら投資とかその他怪しい取引でだ。
それらその対価としてこの戦艦が存在し、且つ戦場の自由気侭な一傭兵の手によって動かされてるという変な現実が成立する。
まあゲームだからな。別にそういう特異なポジションに居座るプレイヤーを許容するだけの度量が周辺にあるというだけの御話し。
「ちょっとぉ♪なんて顔してるのさぁ!♪まだまだ夜はこれからだぜぇ!!フィーヴァ~タァーイムゥ!!♪」
そんな事いいながらも裏で何かやっているようだ、踊りながら話しながらする事じゃないだろコレぇ。
端末の画面では、この戦艦が運用する最新兵器、28の四連装主砲の超光速の紅の火線が敵に全てクリティカルする、つまり全て弱点箇所に必中しかも命中精度が異常に高すぎる。
そして敵からの応射は全て某弾幕シューティングゲームのように避けきる。
断続的なら何発受けようが、表面の対エネルギー防御フィールドで平気な攻撃だが一発たりとも当たってやる気はないらしい。
「あれ?気づいちゃった?しくったなぁ~♪イツキに知られずゲームしながら戯れる魂胆がごわさんだぁ~♪」
そんな事いいながら全然落胆の色を見せない、いつまでも嬉しそうに、どこまでも能天気に楽しそうに今も踊り続ける。
その舞は戦艦の挙動のように、どこまでも流麗で華麗だ、一流のダンサーよりもよっぽど機敏で芸術的な動作を目の前で演出し続ける。
その間も宇宙での攻防は続く。
敵が決定力不足の攻防に飽きたのか、遂に機雷攻撃にシフトした。
その予兆を俺は端末の計測装置群の情報、戦艦の各所に設けられたそれら索敵装置群によって気づけた。
機雷攻撃とは、この場合は大質量の爆弾を敵艦隊近くに精密ワープさせて撃沈に陥れる精密誘導兵器のことである。
一発でも受ければ大破、中波は日常茶判事、そんな凶悪な兵器だ。製造コストは高いし戦略的運用等、難はあるが有用で効果的な攻撃方法だ。
敵の攻撃に対し、この戦艦の対応。こちらも機雷発射によるワープ空間内での相殺だろう。
戦艦にも機雷は搭載されている、しかもこの艦は最新鋭だ。搭載されている機雷の量はちょっとは多いはず、、、おいおい多すぎだろコレは。
俺は今までこの艦の”そういう事”を知る機会もなく、まあいろいろ事情があるのだが、今まさに知ったこの戦艦の特殊性に驚いた。
予測だが、今乗ってる戦艦は大方戦場実戦配備前の試験艦だったのだろう。だから低コストでこんなにも最新鋭の艦が手に入ったの、かもしれない。
話しを戻すが、普通は戦艦の機雷搭載数は数十程度で、機雷搭載特殊艦が数千程度であるはずなのだ。
だがこの艦は戦艦でありながら数千の機雷を搭載していた、これが普通でない事は一目瞭然だ。
ちょっとあれやこれやで調べてみると、カラクリは簡単に露見した。最新の機雷による収納スペースの減少と、そして戦艦自体もそれ用のスペースと発射機構を揃えているな。
ふむ、これなら千程度は運用可能なのかね、卑怯な程の技術力の差を敵に感じさせるだろうがね。
今回の戦いは戦艦同士だから、このアドバンテージはこちらに圧倒的に傾くだろう。
戦艦のみで一斉に発射し相殺を狙うなら、敵は戦艦の数をかなり揃える必要があるだろう。
だが別のというか、次あたりの戦場ではそうは行かないだろう。
話では防御側の敵には機動力はないが、機雷の運用数の多い打撃艦が多数存在する、これさっき言った機雷搭載特化の特殊艦の正式名称な。
今回は別に戦艦同士の戦いだから、機雷戦はこっちに有利なだけで機能するが次辺りどうするのかね、まあ気にしすぎかな。そこら辺全ては幕僚部の仕事でしょ、てか俺らもアドバイザーって事になってるんだった、他人事じゃねーな。
てかこの機雷搭載に特化した戦艦が、コスト的にどれだけの戦場効果を与えるかによって正式採用されるのかどうか。この先全く不明な段階で考えることか知らんが。
これによって敵の要塞や防衛陣地突破に要する機雷戦の不利を改善できればいいんだがね。
比較的万能だが遠征用の戦艦では、今まで機雷の運用が戦略的にできなかったのだ。
だから遠征によって到達する敵の要塞や防衛陣地突破に要する、この機雷戦の不利はどうにもならなかったのだ。上手く採用されると色々と面白い事になるのだが、どうなんだろうね。
「よっしゃぁ!!こちらに向かってた煩いハエは全員撃退だぁ!」
機雷戦は、とりあえずこの戦艦を指向してた奴は全部落としたらしい。
全弾の30%を利用してたところを見るに、俺達の一応所持扱いになってるっぽい国家からの支給品である護衛艦群も含めて守ったらしい。戦いが終れば無料で支給されるらしいから見捨てるのかと思っていたのだが。割と義理堅い所もあるらしいね。
全体的な被害もこちらの方が少ないな、第四艦隊総体は錬度も高いので機雷戦でもその真価を発揮してるようだ。
戦場規模についても説明しとくか、今回は敵の侵攻軍の撤退を迎撃する形で行なわれているらしい。途中参加だからどういった経緯でそうなったかは知らないが。
敵の、東側陣営の一国家。宇宙全体の戦力の4.8%ほどの大国ではないがそれなりの戦力を擁する中規模な国家。
それを俺達西側の大国、これは宇宙全体の20%程度、西側でも30%程の総力を持つ軍隊が迎撃してる格好だ。
敵の遠征軍は12個分艦隊程度で、こちらは色々な所に戦力をバラけさせているので精鋭と言っても小規模な数だ、36個分艦隊である。
超ミニマムな戦線がいろいろな所にある形で、それぞれの戦線で沢山のプレイヤーが大々的に活躍している気になれる、という形式を取るこのゲーム。
あまり大規模な艦隊戦はそもそも発生し難い。今回の戦闘などまさにそれだろう、両陣営の戦力合わせても全体的に微々たる小戦力とも言えない艦隊数だ。
そもそも分艦隊って単位が既にそれを物語っている、大艦隊って単位がそれの上位単位なのだ、このゲーム内の話だがね。実際の宇宙では別の単位を用いて表現する。
そんな訳で、この戦いはそれほど重要じゃないのだ、最前線に近い位置に試験艦をイレギュラーに紛れ込ませられる程度には。
全体の0、01%程度の艦隊総数が戦闘するだけ、第四艦隊のほんの一部を抽出するだけ、様子に見に等しいが、それでも行けるとこまでは行くのだろう。
この先の敵の一要塞は、敵の首都に辿りつく為の数千の回廊の内の一つに過ぎない、落とせればラッキー程度だろう。
「よっし!♪それじゃイツキ!!今日で私達で要塞を落とせるように頑張ろう!!イツキはその為の温存だよぉ♪!」
なるほど、俺に戦いすら気づかせないようにしていた意図はそこか。俺に注意力を一切働かせず精神をすり減らさせない為の処置。
ちなみに俺は艦隊操作はできるはできるが、イリスのような戦艦を一人で十全に動かせるような規格外の天才ではない。
そう、ただの機動兵器乗り。
分かりやすく言えば、アニメのスーパーロボット大戦で活躍する人型機動兵器、そういうのの一オペレーターでしかない。
まあただちょっとだけ操縦が上手いから、周囲の見立てではスーパーエースとか言われるが。全体として見たら大したことじゃない。と、一応謙虚に言っときますかね。