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無駄な事を絶対にしたくないと痛みと共に実感して知るのに無駄な事をする、してしまう‐東スマイルライブシティー


 


 草の匂い。

 花の匂い。

 蛙の匂い。


「イリス、そのカエル、どうしたの?」


「ううん?

 言ってなかった?」


 自然公園に来ていた。

 類稀な超大都市だが、先鋭建築群と人工自然物の調和を目指す方針からか、自然は少なくない。

 しかし、これほど広大なモノとなると、都市部から少し離れないといけないが。


「都市でうろうろしてたから、主従契約したの!

 ぴょんぴょん凄く跳ねれて、乗り物にもできるし! お喋りもできるし凄いの!」


 なるほどよく見るに、長い時を生きて神獣に至った感じかね。

 人工知能換算で、、おそらくAクラスだな。

 超光速通信網、光ファイヴァー回路で。

 相対的思考加速した場合、このレベルの人工生物は創造できるので作り物かと今まで思っていた。


「それにしても♪ こんな場所が都市からちょっと離れただけで在るなんて初耳だよ!」


「まあ、これくらい閑静な場所は珍しいな」


 都会では感じられない、清涼な自然の匂い。

 この世界に来てから、よく嗅ぐようになったな。

 よく味わうようになった自然の香りは、だんだん研ぎ澄まされていったのか、他の場所と区別できるくらいだ。

 太陽の匂いすら鼻を優しくくすぐるようだ。

 そう、優しく、どこまでも、優しく。 

「ふみゃちゃぁああん!!!」


「おい、ど、どうしたんだよ?」


「ごめん、くちゃみした、ずちゅるるるぅ」


「どんだけ、だよ、お前くしゃみが変すぎだ」


 あ、なんかムズムズしてきた、くしゃみしそう。

 俺は我慢しようとした、なんとなく貰いくしゃみとかカッコ悪いだろ? 


「――くちっ!」


 クソ、我慢できずにしてしまった。

 軽い噴出だったが、なんだ花粉症か、別に目も喉も異常ないがぁ。


「花粉症かな?かな?」


「病は気からだ、俺は絶対に認めない主義だ」


「いいね、それ♪、 あれ? でも花粉症って病かな? どうだろうねぇ~」


 イリスはカエルに乗っかっている、ちなみにカエルは巨大サイズだ、少女が上に乗れるくらい。

 そいつが口を開いたんだろう。


「大丈夫ですか、イリスさん?」


「うちゅぅ、だいじょぶ、だから、もうちょっとむちゅむちゅさせてねぇ」


 イリスはまるで低反発な柔らかいヌイグルミのような感触だろう、蛙に盛大に抱きつく。

 ちなみにカエルの声は渋く響くバリトンだった。


「俺はラディだ、よろしく、お前名前はあるのか?」


「ダメダメ、ラディ、この子はカエルだから」


「はぁ? どういうことだ?」


「カエルなんだよ、カエルって名前」


「なんだそりゃ、まあいいか、カエルさんよろしく」


「ああ、よろしくお願いするラディさん」


 俺達二人+一匹は今。

 大小さまざまな大きさの樹林がそびえる森林の近く、を歩いている。

 緑一面というわけではない、芝生が茂る広く開けた場所、気軽に歩ける路の空間が点々とある。

 けれど全体的にそういう場所は極一部なのだろう、ほとんどは人の手の余り入っていない豊かな自然の産物だ。


「ラディ、カエルさん、お弁当にしようかぁ♪」


「おお」


 豊かで寝心地の良さそうな草原に、イリスがグルメテーブル掛けのようなモノを広げる。

 俺は芝生にそのまま寝っ転がっても良かった、カエルは草原にちょこんと座った。

 イリスが転がって、横になりながらリュックサックの中を取り出していく。


「はいはい、おにぎりおにぎり、一杯だよ」


「おお、もらうぞ」 


 ありがたくもらう、数十個ある中から適当に一個もらう。


「具は何が入ってるんだ?」


「うっふっふ、それは食べてみてからのお楽しみだよ!」


「なんか不安だな」


 おにぎりに齧り付く、、、鮭だった、イチゴや飴でも入ってるかとマイナスに期待してたがホウッとした。


「うひゃぁああ! イチゴ大福入ってたぁ!!! おいしいよぉ!! これは当たりだねぇ!!!やったぁー!」


「マジかよ、お前の頭は大丈夫か」


 次はハズレかもしれないな。


 そんな風に昼食を無難に(外れなかった)終えて、徒然と目的もなく日向ぼっこしていた。

 上空には霧っぽい雲が所々に浮かぶだけ、晴れやかな蒼白い空。

 イリスが「やーやー!!♪」、と遠吠えするようにして、山彦が返ってこないか試していた。

 彼方には放物線を画きそびえる山々があるのだ、だが見た目よりも距離があるのか、山彦が返ってこず残念がっていた。

 俺はそれを、のほほんと眺めていた。

 都会は激動の日々、それに比べてここの時間のなんとゆったり流れることか。

 俺は偶には、こんな日もアリだな、とか思いつつ、安息にほっぺたを緩ませていた。

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