絶対自己愛主義者
自己愛に溺れきっている
「おい」
憂鬱だ。
たとえば、今わたしの傍にいる存在。
彼は、掛け値なしに、わたしにとって一流以上だ。
常に、刺激的な情報を与えて摂取させてくれる。
情報収集の上で、わたしの定義し規定する神の領域に位置する。
彼をわたしの脳内に取り込めれば、さっき提示した、わたしの望みが叶うって事。
だが、しかし、そんな事は不可能だ。
まあ、不可能でもいい、一生傍に居てくれればそれでいい、わけだし。
「だめ、全然だめぇ」
「おい」
はぁ、それにしても、彼は刺激的で、しょうがない、どうしようもない。
なんでこれほどまでに、わたし以外の存在に惹かれるのか、よく分からない。
現状、他では絶対に味わえない、だからこそ絶対に比する価値がある。
わたしは、それが悔しい。
彼に依存し、彼が傍にいなければ、幸せになれない、満足できない、退屈し絶望する自分が。
なんでこんなクソクソ。
わたしはわたしだけで世界が完結すればいいのに。
どうしようもないほど、圧倒的な娯楽に、わたしは完全敗北しているのだ。
「おいイリス、おまえ、なんで泣いてんだよぉ?」
「うぇ、だってぇ悔しいんだもん、ビクンビクン、もう立ってられないよぉ、ひくひく」
目を丸くして、突っ込む言葉を考えてる様子。
まったく、本当に悔しい。
彼が次の瞬間、なにするのか、興味関心知識欲を駆り立てられて、もうしょうがない。
ああいやだ、わたしは嫌だ、こんなのは、こんな自分は。
最後の最後で、絶対に他人を信用しないし、排他し、孤独に孤高に、万事抜かりなく生きたい。
生きたかった。
まだ遅くない、これを超越し、わたしは完全なる上位存在に至るのだ、そうでなければ嘘だ。
認められないし許せないし我慢がならない。
どこまでも果てなく上位概念を目指せば、ソコには到達できる、はずだ、そう信じている、宗教のように。
「どうしたんだよ? 怖い顔してるぞ? イリスぅ?」
「いやぁ!! 触らないでよぉ! きらい!」
涙が溢れてくる。
ああいやだいやだ、嫌悪感が、吐き気がする。
わたしは孤独でいい、良かったし、ずっと孤高に。
寂しさなど、退屈の派生と切って捨てて、退屈さえ満たせば、一切なくなると、始まりの切欠はソレだった。
わたしは、他人が絶対に大嫌いだ。
自分も嫌いだ、こんな他人を必要とする自分が嫌いだ。
世界も嫌いだ、こんな不確かで曖昧で不安定で、欠陥と欠損と不幸だらけの場所が。
わたしは、永遠なる過去の経験則から、絶対に信じている。
最後の最後は、一人ぼっちで、ずっとを生きる、己がコレを確信に満ち溢れている自覚がある。
わたしは何も求めたくない、己から勝手に自動的に湧き出てくるモノだけで、満ち足りていたい。
「自分以外の存在は、所詮は他人だぁ!
うえぇ! おまえだって他人なんだぁ! きらいぃ!!」
指差して言うと、彼は困り顔である。
ああ。
ただ己のみを求め、絶対の糧に生きたい。
わたしは他人との絶対の決別を誓うから、どうか神よ。
わたしは、一生の孤独と寂しさを受け入れます、だから。
わたしから溢れ出るモノだけが、わたしにとって唯一無二の、絶対尊き至高のモノにしてください。
「イリス、他人なんかじゃないよ、俺とお前は一心同体、魂で繋がっているんだ」
「うぇ、くだらないオカルト持ち出して、死ねばいい!
だいたいなにソレ中二病っ?!
一心同体っ魂で繋がってるぅ? ばかばかしい非科学的だぁ!」
むかつく、ああムカつくムカつくムカつく。
どいつもこいつもあいつもこいつも。
わたしが存在する上で、今更、わたし以外がわたしを、どうにかするなんて。
今まで、真に救い役立ち助けて認めて愛して褒めて撫でて力になってくれて、、、、なかった癖に。
わたしは一人で生きるんだ。
たとえ、わたしの構成する要素全てが、世界に与えられた存在でも、だ。
世界が与えてくれたわたしが、そう感じているんだ、それ以上の”なにか”が、果たして必要だろうか?
わたしは世界を認めない、信用しない、排他したい。
わたしはわたしだけで満ち足りているのだから、満ち足りたいのだから。
「どいつもこいつも、ゴミ屑のようなモノだ」
「えぇ? 俺も?」
ああ、いらないいらない、何もかも全部いらない、無くなればいい。
それだけがわたしの望みで救いだ。
愛されたいとか、感情自体が吐き気がする。
どうしてそのような気持ちで、わたしが妥協しなければならないのか?
わたしはわたしだけを絶対に愛する、それだけで綺麗に世界は完結するのだから。
他人なんていらない、求めれば求めた分だけ、絶対に損をする構造が確立しているのだから馬鹿だ。
わたしは信仰する、己が世界が至高であると。
世界はわたしに真底みくだされる為に存在している。
わたしは見晴らしの良い場所から、世界というゴミ溜絶景を眺めるだけだ。
「ぅぅえぅ、はやくきえてよぉ、いらないんだからぁ」
「そんな顔されて、ほうておけないよ」
嫌だ嫌だ、なにもかも嫌だ。
なんでこんなにも、今更あたたかいのか。
世界も他人も、絶対の強度で、わたしはキライになった。
これは、もう、果て無い確信の領域で自覚し悟った、わたしの永遠のロジック、真に最終連続論理。
頼るのは自分だけ、その契約で、生きる、という選択した、はず。
自分を心の底から頼ることで、その頼られている実感に、どうしようもなく心酔した。
あの自分に愛されるという感覚、わたしはその為だけに、今まで生きてきたのだ。
なのに、優しくして、あたたかくて、暴力的にわたしからわたしを奪おうとする。
こんな理不尽、不条理、不合理が、認められる? 許せる? 我慢できる? これが平等なつもりかぁ?
ああ、そうだね、殺すしかないようね。
これが、わたしだ。




