表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第五章◆◆ 父と娘が乗り越えるべき運命について
77/632

◆77◆

 父親の失態を厳しく糾弾して当主の座から引きずり下ろそうと企むシェルシェの演説はさらに続く。


「マントノン家の当主である事と道ならぬ恋を実らせる事との二つは、元々両立し得ない相反する事象なのです。かつて外国では、道ならぬ恋を成就させるために王位を捨てた者もいたと聞きます。けじめを付ける意味でも、お父様には当主の座を即刻下りて頂かなければなりません。


「それに、『うっかり孕ませた侍女と結婚し、そのままのうのうと当主を続ける恥知らず』、よりは、『許されぬ愛を貫く為に、当主の地位を惜しげもなく捨てた漢』、の方が、世間の通りもよろしいかと思われます。


「そして私には、『父親の不祥事の後始末をする為に、苦肉の策として無理やり表舞台に駆り出された若過ぎる女当主』、として世間の同情も集まります。誰も『父親の不祥事に乗じて、マントノン家の当主の座を奪い取った娘』などとは考えません。これによって、スキャンダルのマイナス面も多少は緩和されましょう。いかがです、おじい様?」


 そう問い掛けて、妖しく微笑むシェルシェ。


 クぺはシェルシェの提案を一理あると思いつつも、可愛い孫娘が冷徹に権謀術数を説く事に戸惑いを隠せない。


 ついこの間まで、「おじいちゃま、おじいちゃま」、と可愛らしく見上げてくれていた私の天使は、一体どこに消えてしまったのか。


 そのかつての天使は、書斎の机に両肘を突き両手を顔の前で組み合わせて複雑な心境で座っている祖父の背後に歩み寄り、その肩にそっと手を置き、


「何より私は最愛のおじい様に、孫殺しの罪など背負って欲しくありません。マントノン家の人間として、時には非情な決断を迫られる事もありましょう。ですが、今はもっとよい選択肢が残っているのです。どうかお考え直しください」


 と、優しい声でトドメを刺し、もとい懇願した。


 しばしの沈黙の後、


「分かった。お前の言う通りにしよう。スピエレを当主の座から下ろした上で、侍女との結婚を認める事にする」


 もちろん、おじいちゃまは孫娘に屈服せざるを得なかった。


「ありがとうございます。もし、この要求を呑んでくださらない場合は、おじい様を山奥の別荘に監禁して、その間にお父様とビーネの結婚式を強行するつもりでした」


 そして明かされる驚愕の事実。


 孫娘だけあって、祖父の思考パターンをそっくりそのまま受け継いでいたのである。


 私の可愛い天使が、今や悪魔に成り果ててしまった。


 私の可愛い天使がぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ