表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第五章◆◆ 父と娘が乗り越えるべき運命について

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/636

◆72◆

 妻ユティルの葬儀を終えたスピエレは、すっかり落ち込んで抜け殻の様になってしまった。


「あの様子では、立ち直るまでに相当時間がかかるだろうな」


 そんなスピエレを見て、長年連れ添った妻に先立たれた時の悲しみを想像し、やるせない気持ちになる父にして前当主のクぺ。もっとも長年連れ添った自分の老妻は健康そのもので、当分先立つ気配はないのだが。


 それでも、次第にスピエレは周囲の予想より早く元気を取り戻し始め、二ヶ月後には笑顔を見せるまでに回復を遂げる。


「もっと引きずるかと思ったが、意外に早く立ち直ったな。普段ボンクラ呼ばわりされているが、あれで案外、精神的に強いのかもしれん」


 ほっとしつつ、我が子を少し見直したクぺだったが、それからさらに一ヶ月後、


「再婚する事を決心しました」


 と、スピエレから真剣な顔で告げられ、少し精神的に強過ぎやしないかと思いつつも、


「確かに、いつまでも悲嘆に暮れているよりは、気持ちを切り替えた方がいいかもしれん。名門の当主が独り身では、何かと格好が付かない事もあろう。よし、今のお前に釣り合うだけの娘がいないかどうか、知り合いに打診してやる。何人か候補が絞られた所で、時間を掛けてゆっくり選ぶがいい」


 前向きな方が健全だと判断し、早速行動に移そうとしたが、


「いえ、相手はもう決まっています」


 いきなり出鼻をくじかれた。


「お前、葬儀からまだ日も浅い内にそれはないだろう。マントノン家の当主としての外聞もあるし、第一ユティルに申し訳ないとは思わんか? もし再婚を考えている相手がいるとしても、せめて一年位は期間を置いてから」


「出来るだけ早くないとダメなんです。既に彼女のお腹には、私の子供がいます」


 衝撃の事実に、クぺは心底驚き、


「な、何だと、一体、相手は誰なんだ?」


「ユティルの侍女だった、ビーネ・ヴァルトです」


 妻に先立たれてからすぐ、その侍女に手を付けるとは。


 これでは世間から、「マントノン家の当主は、妻が闘病生活を送っている時から、その侍女と不倫関係にあった」、と噂されても仕方がない。


 クぺは驚きを通り越して呆れ果て、さらに我が子のボンクラ加減に悲しみと怒りさえ覚えた。


 誰だこんな奴を当主にしたのは!


 あ、私か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ