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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第二十章◆◆ 華やかな時代の終焉と新たな宣伝材料の模索について
631/631

◆631◆

 結婚して公式大会からきっぱりと身を退いたエーレとは対照的に、引退後もコルティナのやりたい放題は止まる所を知らず、むしろ本格的な暴走へ乗り出した感すらあった。


 引退宣言直後は、そもそも普段が普段だけに本当に引退する気があるのかどうか疑いつつも、


「あのふわふわ魔女が大会に出ないのは何だか寂しい」

「唯一無二の存在だったもんな、剣術的にもキャラ的にもふわふわで」

「優勝インタビューと称したふわふわな漫談を楽しみにしてたのに」


 などと、長年に亘って大会をふわふわと盛り上げてくれたこの稀代のエンターテイナーを惜しむ声も多かったが、いざ剣術御三家の大会が例年通りマントノン家の小学生の部から始まると、今までと全く変わらず、お馴染みの魔女コスプレをしたコルティナがララメンテ家の応援団席ではしゃぎまくっており、


「じゃ、そろそろ横断幕行っくよー!」


 という号令と共に、


「Q:皆から愛された国民的マスコットは引退した! なぜだ!? A:人妻になっちゃったからさ」

 

 応援と全く関係の無いおちゃらけた文が書かれた横断幕を掲げさせて笑いを取りに行くその姿に、人々は惜しむだけ無駄だったと嫌でも気付かされる。


 アウェイであるマントノン家とレングストン家の大会では遠慮して活動範囲を応援団席に限定していたコルティナだが、いよいよホームのララメンテ家の大会が始まるとその手の遠慮もかなぐり捨て、大会役員という肩書の下、主催者席に堂々と魔女コスプレで座った挙句、そのふざけた格好のまま開会と閉会の挨拶を述べる役を受け持つという暴挙に打って出た。


 さらに開会の挨拶をただの挨拶で終わらせず、


「お堅い挨拶はこれ位にして、エーレの遊園地ウェディングの裏話でもしましょーかねー」


 大会と関係無い話を延々と語り出して観客達をドッカンドッカン沸かせ、結果、開会の挨拶が開会を大幅に遅らせるという本末転倒な状況にまで発展する。


 幸い観客達や出場選手達から苦情は出なかったものの、このゆゆしき事態を憂慮した一部ララメンテ家の門下生達は、


「何かやらかすとは思ってたけど、まさかここまでひどいとは思わなかった」

「このままだとウチの流派がますます色物扱いされてしまう」

「せめて閉会の挨拶の漫談ショー化は阻止しないと」


 相談の末、魔女の暴走を食い止めるべく、赤いランプの回点灯が付いたポールを主催者席の横に立てる事にした。


 その日の全ての試合が終わり、コルティナが閉会の挨拶を述べる段になって、


「ではここで、『小型軽量戦機エレガイル』の今後の展開についてちょっとだけ――」


 しれっと脱線しそうになった時、突如回点灯の赤い光が点いて派手に回り出し、


「んー? これは『時間がないから早く終われ』ってことかなー?」


 話を中断されて首をかしげるコルティナに、会場内は大爆笑。


「という訳で、エレガイルの話はまた次回ー! 皆様、本日の御来場、まことにありがとうございましたー!」


 まるで元からそういう演出であったかの様にふわっと挨拶を終え、トンガリ帽子を脱いでお辞儀をするコルティナに、観客席から拍手喝采が湧き起こる。


 その後、流石に回点灯による妨害行為はやり過ぎだったかと、設置を強行した門下生達が謝りに行くと、当のコルティナは別段気を悪くした様子もなく、


「あの回点灯はすごくいいアイデアだったねー! お客さんも楽しんでくれてたよー!」


 まんまと魔女のやりたい放題に手を貸してしまった事に気付き、何ともやるせない気持ちになったという。

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