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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第四章◆◆ 不死身で無敵な殺人鬼となった娘について †ララメンテ家の惨劇†
63/632

◆63◆

 コルティナの、「自分は体力を温存しておいて、シェルシェが疲れるのを待つ作戦」が見事にハマり、形勢逆転した試合の行方を固唾を呑んで見守る五万人の大観衆。


 さっきまでふらふらしていたのが嘘の様に、しれっとごく普通に構えているコルティナに、一部からは、


「お前は男の前だと瓶のフタが開けられないフリをする非力アピール女か」


 などと、妙なツッコミが入っていたりもしていたが。


 一方、疲労の色を隠せないシェルシェは見た目にも余裕がなく、立っているのがやっとの様子。


「本気で苦しそうだけど、すごく楽しそうに笑ってるわ」


 双眼鏡を覗きこんでいる客席のエーレが、防護マスクの下のシェルシェの表情を簡潔かつ的確に表現した。


 そんなシェルシェの表情を一番間近で観察しつつ、


「次にそっちから繰り出した攻撃に合わせて、一気に終わらせてあげるよー」


 とばかりに待ち構えるコルティナ。


 シェルシェもここに及んで、もう自分の攻撃パターンとタイミングは対策され尽くしている、と悟ったのか、剣を左手だけで持ち、上段に大きく振りかぶるという、今までの試合で見せた事のない構えに転じた。


 剣を柄の端の方で握っている事と、片手で打つ事と合わせて考えると、離れた間合いからの一撃を狙っている様子である。


 しかし、初めて見る構えにコルティナは動揺する様子もなく、シェルシェの顔をじっと注視し続ける。


 やがて信号が赤から青に変わる様に、シェルシェの表情が待機から攻撃に変化した。


 アレは前に飛び出し、こちらの頭部を狙って、剣を上から振り下ろす時の顔。


 そう判断したコルティナも、同時に相手の剣の間合いの奥に飛び込み、逆に一瞬早くシェルシェの頭部を打つ。


 はずだったが、一瞬早く打たれたのは自分の頭部だった。


 よく見ると、シェルシェの剣を持つ左手が、いつの間にか柄の端ではなく、もっと鍔寄りの所を握っている。


 コルティナが飛び込んで来る事を見抜き、それに合わせて瞬時に握り位置をずらし、剣の間合いを変えたのだ。


 審判が一本を認め、この一時間以上に及んだ長い長い決勝戦は、外部からの参加者であるシェルシェ・マントノンの優勝で幕を閉じた。


 前人未到の三冠達成に、客席からも大きな歓声が上がる。


 もっともそこには、「やたら長い試合を最後まで脱落する事なく見届けたぞ」、という観客個人の達成感もかなり混じっていたのかもしれないが。


 エディリアの剣術の歴史がまた一ページ。

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