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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第二十章◆◆ 華やかな時代の終焉と新たな宣伝材料の模索について

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622/638

◆622◆

 エーレの婚約発表によって絶望のどん底に叩き落とされた大きなお友達が、耐え難きを耐え忍び難きを忍んで何とか立ち直った頃合いを見計らったかの様に、結婚式の場所と日時という具体的な情報が公開され、


「うわぁああああ! 祝福してあげられるだけの心の余裕なんて幻想だったあああ!」

「俺のエーレが嫁に行ってしまうという現実から目を背けていただけだったんだあ!」

「誰か時間を止めてくれえええ! 永遠にエーレが嫁に行かない様にいいい!」


 再び絶望のどん底に叩き落とされるも、会場となるエディロランドの広場で今年も実物大の「小型軽量戦機エレガイル」を展示する予定だと聞いて、


「ちっちゃなエーレの代わりに巨大なエレガイル像をあてがっておけば、俺達が喜ぶとでも思ったか? その通りだよ、ちくしょう!」

「しかも巨大ロボの掌に乗れてそこから地上を見下ろせるだとお! 男の子なら誰もが一度は憧れる夢のシチュエーションじゃねえか!」

「誰か時間を早く進めてくれえええ! 公開まで居ても立ってもいられねええええ!」


 一瞬で掌を返し、彼らの絶望の底の浅さが露呈された。


 二ヶ月後、それまで極秘に製作されていた実物大エレガイル像のパーツが次々とエディロランドに運び込まれ、金網フェンスで仕切られた広場の一画で組み立て作業が始まると、それを見るだけの為に高い入場料を払い、遊園地のアトラクションには目もくれず、台座、支柱、足、胴体、腕、頭と組み上がって行く様子に興奮する変態、もとい大きなお友達が全国から多数押し寄せる。


 そしてついに結婚式の前日にエレガイル像が完成すると、巨大ロボの目の前にいる感動と、エーレが嫁に行ってしまう悲しみが同時に湧き起り、


「ついに明日という日が来てしまうううう!」

「俺の情緒はグチャグチャだあああ!」

「お前も悲しいだろ、エレガイルゥウウウウウウ!」


 金網フェンスにしがみついて号泣しながら完成ホヤホヤのエレガイル像に向かって叫ぶ大きなお友達。


 その異様な光景を見下ろすエレガイル像はロボット特有の無表情で、


「知らんがな」


 と突っ放している様にも見えた。

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