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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十九章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅢ 「採算」
607/631

◆607◆

 せっかく三年ぶりの顔合わせなのだから、最後にもう一度くらい「巨大怪獣」ミノン対「大道芸人」パティの大一番を観たい。


 そんな観客達の願いもむなしく、レングストン家の大会に引き続いて今回もこのスーパー姉妹対決が実現する事はなかった。


 準決勝でミノンがレングストン家の高校二年生ヘンゲン・シュリットに、パティもララメンテ家の高校三年生ペスタニャ・セハに敗れるという、まさかの大番狂わせがほぼ同時に起きたのである。


 このドミノ倒し世界記録に挑戦して最後の一枚が倒れなかった時の様な盛り下がり展開を目の当たりにして、今日のお祭り騒ぎもここまでかと思いきや、


「これはついにデータ分析が天才を凌駕する時代が来たのか?」

 

 間髪を入れず、「データ分析頂上決戦」という新たなお祭り騒ぎに突入する観客達。


 しかしそんな会場の盛り上がりとは裏腹に決勝に進んだ二人の選手は、突如その双肩に負わされた期待と超大物を仕留めた興奮の余韻とが相まって、地方から都会にやって来たばかりの若者よろしくいささか地に足が着いていない様子である。


 そんな大舞台に慣れていない二人を見て、


「ここで一発、緊張をほぐしてあげないとねー」


 ここぞとばかりに新たな横断幕をララメンテ家の仲間達に掲げさせるふわふわ魔女コルティナ。


 そこには、「乗る度に寿命が縮む呪われし巨大ロボットのパイロット募集! (経験不問、長寿の家系を優遇)」、と馬鹿馬鹿しい上に縁起でもない文が書かれていた。


 会場のあちこちから起こる笑いの波の中、


「パイロットの運命が悲惨過ぎる」

「もっと普通に乗れるロボはなかったのか」

「読むと百日寿命が縮む新聞じゃないんだから」


 いつもの様に律義に突っ込むララメンテ家の仲間達。


 一方、レングストン家の応援団のエーレはこれを見て、


「相変わらず何を考えているんだか」


 付き合いの長い親友の奇行に呆れつつ、


「でも、選手の緊張を解こうとする努力だけは認めるわ。ウチも横断幕行くわよ!」


 よせばいいのに、この奇行師に対抗して用意した横断幕を仲間達に掲げさせた。


 そこには、「巨大ロボットも剣術も普段の修練の積み重ねが大事!」、と大真面目に書かれている。


 会場は一瞬静まり返った後、


「レングストン家はついに巨大ロボットまで始めたのか」

「巨大ロボットの普段の修練て何なんだよ」

「変形したり、合体したり、必殺ビームを発射したりするんだろ、きっと」


 大爆笑の渦が巻き起こり、これによって決勝に臨む二人の選手の緊張をほぐす事に成功する。


「だ、大成功ね。で、でもちょっと皆、笑い過ぎじゃないかしら?」


 結果オーライとはいえ自分が想像していたのとかなり異なる効果がもたらされたのを見て、動揺しまくりつつも必死に平静を装うエーレ。


「別に恥ずかしがらなくてもいいんだよ、エーレ」

「標語に『巨大ロボット』を絡めようとして頑張ったんだよね?」

「文章の無理やり感が最高だと思う」


 横断幕のアイデアを聞かされた時から多分こうなるだろうと予想しつつも、実際に掲げるまで黙っていたレングストン家の仲間達が、ここぞとばかりにエーレを励ますフリをしてからかい始める。


 これに対し、言い訳は見苦しいとばかりに真っ赤になりつつも何とか作り笑顔で耐えるエーレ。


「あー、また負けちゃったかー。やっぱり、天然物には敵わないなー」


 全力で戦った後の戦士の様なイイ笑顔でトンガリ帽子を脱ぎ、お笑いバトルの勝者に敬意を表すコルティナ。


 その後の決勝戦では、このお笑いバトルとは逆にララメンテ家の選手がレングストン家の選手に勝利したが、エーレのおかしな標語のインパクトが大き過ぎた為、観客達はもう「データ分析頂上決戦」の事などどうでもよくなっていた。

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