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これまでの二大会同様、ララメンテ家の物販でも「劇場版エーレマークⅡ」とのコラボ商品が、えげつないレベルで大量に投入されていたのは言うまでもない。
特にララメンテ家と縁が深いアトレビド社はコラボパッケージ仕様の既製品の他、会場周辺に屋台を多数設置し、エーレマークⅡのイラストが描かれた袋に詰められたわたあめ、エーレマークⅡの焼き印入りの大判焼き、エーレマークⅡの形をした飴細工などをその場で作って売り、
「この手の屋台があると、田舎の祭りを思い出す」
「試合を観なくても、会場の回りをぶらつくだけで楽しいな」
「こういう所で売ってる菓子は、味とかじゃなく雰囲気だ、雰囲気」
来場客をお祭りムードで釣る作戦に打って出て、記録的な売上げを叩き出していた。
「本来、大会は道場にとって年に一度のお祭りみたいなものだからねー。この位派手にやってもいいんだよー」
アトレビド社を唆してこのお祭りムード作戦を実行させた黒幕ことコルティナに対し、
「いや、色々とやり過ぎだろ」
「物販専用にもう一つ会場を用意したレングストン家でも、ここまで派手にやらなかった」
「そもそも、よその家のキャラクターで荒稼ぎしている事自体おかしい」
無論、小学生の部を応援中の仲間達からはツッコミが入る。
「でも、流派の壁を越えたお祭りって素敵じゃないー?」
特注の巨大大判焼きを食べながら、もっともらしい事をほざく魔女コスプレ姿のコルティナ。
「物は言いようだな、おい」
「壁を越えられ過ぎて、ウチのアイデンティティーが崩壊してるんだけど」
「むしろ、レングストン家に乗っ取られた感すらある」
「逆に考えるんだよー。乗っ取られたと見せかけて、実は乗っ取ってると思えばー」
「どう考えても占領下だろ、こんな状況」
「観客席の到るところに、エーレマークⅡの旗が翻ってるし」
「なんか陥落直後の都市みたい」
「なら、かわいい後輩達に奪還してもらうしかないねー。じゃ、そろそろ応援用の横断幕、いくよー!」
ノリノリなコルティナの指示によって渋々広げられた横断幕には、「はじめてのおつかい:巨大ロボに乗って最前線に投入される小学生姉妹編」と書かれており、観客席のあちこちからどっと笑い声が起こった。
「一体どんな番組だよ!」
「おつかいのハードルが高過ぎる」
「頼むから、バスか電車でもっと平和な所に行かせてあげて」
そんな仲間達からのツッコミにふわふわと微笑んで、
「常識を飛び越えた所にある自由度の高い発想こそ、ララメンテ家の剣術の極意なりー」
一理あるのかないのかよくわからない極意を説くコルティナ。
もう何言っても無駄だこいつ、と仲間達が呆れる中、小学生の部はララメンテ家の選手が優勝して無事に面目を保った。
かわいい後輩の快挙を喜びつつも、どこか釈然としない仲間達。