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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十九章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅢ 「採算」

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◆603◆

 武芸者の誇りを重んじるレングストン家の全国大会がコラボ商法全開の「劇場版エーレマークⅡ」展と変わり果てている件については、自分もその戦犯として責任を感じる所もあったであろうが、その辺は一切表に出さず、あくまでも誇り高き剣士として一般の部に臨むエーレ。


 しかし、お祭り気分で試合を観に来ている観客達の大半にとっては、


「等身大フィギュアのエーレもいいけど、やっぱり本物の方が可愛いな!」


 誇り高き剣士と言うより、「劇場版エーレマークⅡ」展の可愛い展示物としか思われていない。


 一方、このお祭り騒ぎの流れを作った真の戦犯とも言えるコルティナは、いつもの様にララメンテ家の応援団に剣術とまったく関係ない、「ロボット三原則:合体・変形・必殺技」、と書かれたふざけた横断幕を掲げさせ、


「それはロボット三原則じゃなくて、王道ロボットアニメ三原則だろ!」

 

 マニアックな観客達に突っ込みまくられながら、「劇場版エーレマークⅡ」展をさらに盛り上げる事に余念がない。


 大方の予想通り、この二人が順調に勝ち進んで準決勝で対決する展開となり、会場内は、待ってました、とばかりに熱狂の渦に包まれた。


 しかし、荒れ狂う台風の目の中が却って穏やかに晴れている様に、試合が始まってもエーレとコルティナは互いに相手の出方を窺ってほとんど動こうとしない。


 周囲のお祭り騒ぎなど眼中になく、ただ勝負に没頭する二人の剣士の姿だけがそこにあった。


 試合時間の半分が過ぎた頃、一瞬の隙を突いて放った右の長剣がコルティナの頭部を打って、まずエーレが一本先取。


 仕切り直して再び長い睨み合いが続いた後、コルティナが前に出てエーレの左手を打とうとするが、エーレは左の短剣でこれを受けると同時に、逆に右の長剣でコルティナの頭部を狙う。


 コルティナはこれを受け止められた剣を横にしてブロック、そのまま鍔迫り合いになった所で試合終了。エーレの勝利が確定する。


 エーレマークⅡのイラストが描かれた大小様々な応援旗が観客席のあちこちで翻り、轟音の如き「ツンデーレ」コールが湧き起る中、試合を終えた二人が互いの健闘を称えるべく中央で抱き合い、


「またとっておきの漫談を披露する機会を逃しちゃったよー」


 試合とは何の関係もない事をボヤくコルティナ。


「本当に、いい試合だったわ」


 それをスルーして、あくまでも健闘を称えようと頑張るエーレ。


「いよいよ、次のウチの大会で引退だねー」


「そうね。またあなたと戦える事を願っているわ」


「このちっちゃくて可愛い生き物の抱き心地をパティにも堪能してもらいたかったなー」


 変態を持ち出して、頑張るエーレの邪魔をするコルティナ。


「やめて」


 変態に抱きしめられる場面を想像して背筋が寒くなるエーレ。


「この抱き心地を一人占めするエーヴィヒさんが羨ましいわー」


 続いて、未来の夫を持ち出すコルティナ。


「やめろ」


 未来の夫に抱きしめられる場面を想像して動揺するエーレ。


「来年の今頃は、エーヴィヒさんと一緒に作ったちっちゃくて可愛い生き物を抱きしめてるのかなー?」


 とどめに幸せな未来予想図を持ち出すコルティナ。


「やめんかあ!」


 色々想像してしまった結果、真っ赤になってしまうエーレ。


 その後、決勝戦を制して、最後の自家大会を優勝という最高の栄誉で締めくくる事が出来たものの、


「私も、まだまだ修行が足りないわ……」


 その栄誉に驕ることなく、気を引き締めるエーレ。


 油断すると、つい緩んでしまいそうになる口元を手で押さえながら。

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