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強風を利用して凧を大空高く上げる様に、記録的ロングランを続ける「劇場版エーレマークⅡ」の勢いに乗る形で、その基本設定を継承した完全新作テレビアニメ「小型軽量戦機エレガイル」の製作が発表され、
「映画じゃなくてテレビ?」
「映画でエーレ役だった声優がまた主人公やるみたいだけど、エーレ本人はもう出ないのか」
「なんかちょっとがっかりだな」
エディリア全土の小さなお友達と大きなお友達は、作品からみんなの大好きなマスコットが外されてトーンダウンしたものの、一部公開されたロボットとキャラのデザインを見て、
「ロボはよさげじゃないか! 合体変形のギミックもある!」
「主役の女の子も、エーレの面影が残ってて萌え!」
「これであと十年は戦える!」
目にもとまらぬ早業で掌を返し、この新企画を概ね好意を以て受け入れた。
以後、本放送スタートまで小出しにされる追加情報に期待と妄想を膨らませ続ける彼らはさておき、いよいよエディリア剣術御三家も全国大会のシーズンに突入する。
今回はマントノン家も最初から流派の垣根を越えて「劇場版エーレマークⅡ」と全面的にコラボする構えを見せ、物販コーナーではレングストン家公認の関連グッズの数々に加え、マントノン家の大会会場でしか買えない限定モノまで堂々と売られる始末。
さらには劇中で当主シェルシェが声を演じたアナウンサーの等身大フィギュアが作られ、デスクに座ってニュースを読み上げている場面が再現され、そのフィギュアと並んで一緒に記念写真が撮れるコーナーまで設けられて大盛況となった。
この年は、マントノン家のスター選手であるミノン、パティが三年ぶりの姉妹対決となる高校生の部が大いに盛り上がる事が予想される一方、スター不在の小、中学生の部は身内しか来ない地味で小規模な大会となるはずだったのが、これらの全力コラボが功を奏して通常ではありえない程の観客動員数を記録し、
「商売とはいえ、マントノン家がここまでやるとはねえ。節操のないララメンテ家ならともかく」
などと言う声が客席のあちこちで囁かれる中、
「いや、節操がないのはララメンテ家じゃなくて、コルティナだけだから!」
ララメンテ家の応援団は異口同音に異議を唱え、
「そーです。私が節操のないお姉さんです」
当のコルティナはいつもの魔女コスプレで巨大な串団子を食べながらふわふわと笑っていた。




