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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」

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◆575◆

 悪者とはいえ、救出に向かっていた対象が目の前で食われる、というショッキングな映像をまざまざと見せつけられ、


「……自業自得だわ!」


 その無惨な最期を憐れに思いつつも意地を張って表には出さず、冷たい言葉を吐き捨ててツンデーレマークⅡを停止させるエーレ。


「よくやった、エーレ! これで人類は救われた! ただちに地球へ帰還せよ!」


 モニターの隅に追いやられた豆粒の様に小さな通信用ウインドウの中から、空気を読まずに浮かれた口調で呼びかける父ムート。例えるなら死亡者が出た事故現場で「イヤッホォォォウ!」とわめく酔っ払い。


「地球へ帰還する前に」


 モニターに大きく映る青白い炎に包まれた禍々しい竜の生首をキッと見据え、両手に握ったレバーを前に力強くスライドさせ、足下のペダルを思い切り踏み込み、

 

「倒さねばならない化け物が、まだ一匹残ってます、お父様!」


 ツンデーレマークⅡによる頭部三号への突撃を再開するエーレ。


「暴走した大カリカリ魔竜の生首など放っておけ! カリカリ博士亡き今、そいつは人類にとって脅威でも何でもない! 放っておけば地球の引力に引っ張られて大気圏で燃え尽きるか、無駄に宇宙空間を飛び回って力尽きる!」


「放っておきたいのは山々ですが、どうやらこの化け物、カリカリ博士だけでは物足りない様です!」


「なるほど、生首だけに食っても食っても腹にたまらないという訳か!」


 上手い事を言ったつもりでドヤ顔になるムート。エーレが言いたかったのはそういう意味じゃない。


 そんな天然ボケのムートを無視して、

 

「『ホットケーキ、三、段、斬り』!」


 と技名を叫ぶエーレ。「三、段、斬り」と言葉を区切るのがポイント。


 エーレの指示を受け、頭部三号に対し、飛び込んでは左の長剣で斬りつけて素早く離れる、というヒットアンドアウェーな斬撃を三度繰り返すツンデーレマークⅡ。


 額と上あごと下あごに計三つの深い傷を負った頭部三号は、この斬撃の報復とばかりに、開いた口から例の手裏剣を三個、ツンデーレマークⅡに向けて至近距離から発射。


 ツンデーレマークⅡは急遽二剣を構え直し、無駄のない小刻みな剣捌きでこれらを全て撃破した後、攻撃の第二波を警戒して大きく距離を取ろうとする。


 しかし、そうはさせじと頭部三号はツンデーレマークⅡとの距離を縮めて来た。その様子は必死に逃げるダイバーを追尾する人食い鮫の様。


 かくてツンデーレマークⅡと頭部三号による追いかけっこが始まり、宇宙空間に金と青の二本の光の軌跡が縦横無尽に描かれて行く。


 頭部三号は何度も何度も接近しては咬みつこうとするが、ツンデーレマークⅡはその都度、間一髪の所でこれをかわし続けた。


「この生首、カリカリ博士が乗ってない時の方が手強いわ!」


 死んだ後もエーレに評価を爆下げされるカリカリ博士。


「パイロットに掛かる負荷を考慮しなくていい分、機動性が上がっているのよ、エーレ!」


 ツンデーレマークⅡにも完全に要らない子扱いされるカリカリ博士。


「このままではラチが明かない! エーレ、ツンデーレマークⅡ、『バカめ、それは残像だ』作戦を実行するのだ!」


 同じくモニターの隅で要らない子扱いされているムートが叫ぶ。


「何ですかそれは!?」

「聞いてません!!」


 寝耳に水状態の二人を無視し、


「姿勢制御補助リング、解除!」


 ムートは遠隔操作でツンデーレマークⅡの手首、肘、肩、膝、足首に付いていたリングを一斉に外し、各リング間の位置関係を変えずにツンデーレマークⅡのすぐ横にスライドさせた。


「これでツンデーレマークⅡは、エーレマークⅡと補助リングに分離した! 補助リングが敵を惹きつけている間に、横から回り込んでトドメを刺すのだ!」


「あのリングを囮にするって訳ね!」

「了解!」


 珍しく役に立ちそうなムートの命令に従い、横を飛んでいる十個の青白く光り輝く補助リングを囮に残し、ツンデーレマークⅡ改めエーレマークⅡを大きく旋回させるエーレ。


 これで生首は分離した補助リングの方を追いかけるはず、と思いきや、


「補助リングじゃなくてこっちに来るわ!」

「意味が無いじゃない!」


 囮に惑わされる事無く、しっかりエーレマークⅡの方を追って来た。 


「『バカめ、それは残像だ』作戦は失敗したか! 無念!」


 大真面目に悔しがるムート。


「お父様あああああああッ!」


 やり場の無い気持ちを叫ぶエーレ。一瞬上がったかに見えたお父様の評価の下落は止まらない。

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