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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」
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◆570◆

 首を切られてもしばらく生きているヘビのごとく、頭だけになってもまだ相手に喰らいつこうとしていた大カリカリ魔竜。


 こっそり忍び寄ってそのまま頭をガブリと丸かじり、かと思われたその瞬間、ツンデーレマークⅡは落下する猫の様に素早く身をよじって大カリカリ魔竜のアゴにキックをかまし、辛くも難を逃れる。


「胴体じゃなく、頭の方に乗っていたとはね!」


 通信用ウインドウに映るカリカリ博士に向かって、トリックを暴いてみせるエーレ。


「その通り。むしろ宇宙空間ではこの方が動き易いのだ!」


 暴かれても動じず、逆にそれを正当化するカリカリ博士。


「え、胴体にくっついてた時より動きが鈍くなってない?」


 素朴な疑問を口にするエーレに対し、


「探知されぬ様、この頭部に残っていたエーレニウム粒子はほとんど放出したからな!」


 自機がガス欠状態である事をわざわざ親切に解説してあげるカリカリ博士。敵なのに。


「捨て身を通り越して自殺行為よ! そんな事したら、すぐに動けなくなるじゃない!」


「それはどうかな?」


 カリカリ博士がそう言うのと同時に、首と翼と尻尾を斬り落とされた情けない姿で機能を停止していた大カリカリ魔竜の腹が鳩時計の様にパカッと開き、そこから例のちっちゃくても一発で都市一つ壊滅出来るというミサイルが発射された。


 ただし、その向かう先はツンデーレマークⅡでも地球でもなく、カリカリ博士が搭乗している大カリカリ魔竜の頭部へまっしぐら。


「本当に自殺する気!?」


 予想の斜め上を行く展開に驚くエーレ。


「違うわ、エーレ! 奴の狙いは――」


 ツンデーレマークⅡがその言葉を言い終える前に、大カリカリ魔竜の頭部は大きく口を開き、飛んで来たミサイルを、パクン、と呑み込んだ。


「ふはははは! これでエーレニウム粒子の補給は完了だ!」


 得意げなカリカリ博士の言葉を裏付ける様に、大カリカリ魔竜の頭部は再びキンキラキンに輝き、


「このスピードについて来れるかな?」


 ツンデーレマークⅡの周囲を目にも止まらぬ速さでビュンビュン飛び回り始める。 


 しかしエーレは慌てず騒がず、ツンデーレマークⅡをその場にピタリと静止させ、左の短剣を前に突き出し、右の長剣を頭上に振りかぶる、お馴染みの構えを取らせた。


「たとえそっちがどんなに速いスピードで動こうとも!」

「私の剣のスピードはそれを上回る!」


 力強く言い切るエーレとツンデーレマークⅡ。


「ならば勝負だ!」


 そう叫んで、ツンデーレマークⅡの真下から猛スピードで大カリカリ魔竜の頭部を突っ込ませるカリカリ博士。


 以下、戦闘の様子がスローモーションで示される。


 下から迫り来る敵に対し、頭上に振りかぶっていた長剣を振り下ろすツンデーレマークⅡ。


 それを予期していたかの様に進路を大きく変え、紙一重で剣先をかわして上昇を続ける大カリカリ魔竜の頭部。


「いかに速くとも、当たらなければどうと言う事はない!」


 ドヤ顔で言い放つカリカリ博士。「スローモーションなのになぜ台詞の速度は変わらないのか」、などと突っ込んではいけない。そういう演出なのである。


 そのまますれ違う様にして上昇を続け、ツンデーレマークⅡの上方に少し飛び出た所でくるっと急旋回して下向きになり、大きく開いた口で相手の頭を有効咬みつきエリア内に捉える大カリカリ魔竜の頭部。


「もらった!」


 勝利を確信したカリカリ博士の叫びと共に、その大きな口が閉じられようとしたその時、


「今だ! 必殺、『ネコミミカッター』!」


 突如、この戦闘に直接参加していないはずのムートの声が響き渡り、ツンデーレマークⅡの頭に付いていた二つの猫耳が大カリカリ魔竜の口の中へと発射された。


 大カリカリ魔竜の喉の奥から後頭部を貫通し、そのまま宇宙の彼方へすっ飛んで行くネコミミカッター。


 ネコミミカッターを喰らってキンキラキンな輝きが消え、ツンデーレマークⅡに咬みつく寸前で全機能を停止する大カリカリ魔竜の頭部。


 ここでスローモーション演出が終わり、


「人が真剣に戦っている最中に勝手にマークⅡを遠隔操作しないでください、お父様! って言うか、何なんです、今のは!」


 真剣勝負を間抜けな茶番にされたエーレが、モニターの片隅に追いやられた小さな通信用ウインドウに映る父ムートに抗議する。


「『ネコミミカッター』だ! 猫耳は超高性能エーレニウム粒子探知装置以外にも、この様に強力な武器として使える!」


「そんな話は一言も聞いてません!」


「言い忘れた!」


「忘れるなぁっ!」


 しかし、ひとしきり突っ込んでから大きくため息をつき、


「でも、確かに危ない所を助けてくださった事は感謝します。もっとも、咬まれる前に剣を返して相手を下から斬り裂くつもりでしたけど!」


 一応感謝の言葉と、不発に終わった華麗なる勝利について述べ、


「まあ、マークⅡの頭から、あの妙な猫耳が無くなって清々しました」


 それがせめてもの救いとばかりに、ちょっと憎まれ口を叩くエーレ。


「心配ない、あのネコミミカッターはしばらくすればブーメランの様に戻って来て、再び頭に装着される!」


 しかしその救いを容赦無く打ち砕くムート。


「戻すなぁっ!」


 そんなエーレの突っ込みも空しく、宇宙の彼方から猛スピードで戻って来るネコミミカッター。

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