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大カリカリ魔竜を倒すべく、光の尾を引いて宇宙空間を一直線に突き進むツンデーレマークⅡ。
二者の位置関係はコックピット内の正面モニターに、大カリカリ魔竜を示す黄色い光点と、そこを目指して進むツンデーレマークⅡを示す赤い光点として表されている。
と、黄色い光点から新たに十数個の光点が分裂し、逆に赤い光点の方に向かって来た。
「エーレニウム粒子を帯びた飛行物体群がこっちに来るわ、エーレ!」
正面に向けた猫耳をピクピク動かしながらエーレに警告するツンデーレマークⅡ。
「例のミサイル?」
モニターを注視しつつ問うエーレ。
「ミサイルならバリアで防御出来るから問題ないけど、ひょっとするとアレは――」
ツンデーレマークⅡは目で飛行物体を直接捉え、その拡大映像をモニター内の別ウィンドウに映し出す。それは縁から光る刃を出して回転する円盤状の物体であった。
「手裏剣よ、エーレ! あの刃はバリアを超えて来るから気を付けて!」
「なら、叩き落とすまでよ、マークⅡ!」
ツンデーレマークⅡを停止させ、真っ向から手裏剣と対峙する覚悟を決めるエーレ。
が、十数個の手裏剣はギリギリまで近付くと急角度で衝突を回避し、ツンデーレマークⅡを取り囲む様にして縦横斜めにグルグルと回り始めた。その姿はまるで巣をイタズラした子供に怒ってその回りに群がる蜂の様。
まず三個の手裏剣がそれぞれ異なる方向から同時に襲いかかったが、ツンデーレマークⅡは二剣を素早く振るってこれらを撃破。斬られた手裏剣はそれぞれ爆発して金色に輝く球となった後、光を失って宇宙の闇に散って行く。
残りの手裏剣はさらに速度を上げて複雑な軌道を描き始め、その中心に位置するツンデーレマークⅡに斬り込む隙を窺う。
これに対し、両腕を大きく広げ、剣を水平に伸ばして構え、
「今よ! 『ジューサーミキサー』!」
エーレがそう叫ぶのと同時に、ツンデーレマークⅡはスピンしながら手裏剣の軌道に突っ込み、瞬く間に六個の手裏剣を撃破。
生き残った手裏剣はツンデーレマークⅡから一旦離れて距離を取り、分散して一時停止した後、それぞれ無秩序なリズムと軌道で襲いかかる。
これよりしばらくの間、体を回転させながら次々と手裏剣を叩き斬って行くツンデーレマークⅡを、目まぐるしく視点移動するカメラワークで追う映像が続く。
「全方位から雲霞のごとく襲いかかる小型無線誘導兵器との戦闘は、『的の小ささとすばしっこさ』を強調する演出が大事です! 見ている方が疲れる位に!」
このシーンについて興奮気味に解説するランゲ監督。
その映像を見ながら、スタジオで宙吊りにされ、そのまま空中でグルグルと回され、なおかつ剣を鋭く振るう演技を何パターンも撮った記憶が蘇り、
「確かにロボットのモーションキャプチャーをやる時、このシーンが一番大変だった気がする」
と心の中でつぶやく本物のエーレ。
見ている方も疲れるかもしれないが、演じている方はもっと疲れるのである。
 




