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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」
563/631

◆563◆

「遊園地の広場に戻るのだ、ツンデーレマークⅡ! そこで専用輸送機と合流し、宇宙へ飛べ!」


 さっきまでのしょうもないやりとりなど一切無かったかの様に、大真面目な口調で指令を下すムート。


 これを受けてエーレとエーレマークⅡ改めツンデーレマークⅡは、


「マークⅡ、発進よ!」

「了解! マークⅡ、行きます!」


 不本意ながら命名されてしまった「ツンデーレマークⅡ」から意図的に「ツンデーレ」部分をカットするという最後の抵抗を示しつつ、地下格納庫から地上に通じる四角い穴の中を上昇して行く。


 すっかり暗くなり、ちらほら星が瞬く夜空を背景に高床式倉庫風に持ち上がったままの本部道場の下から、その身から発せられるエーレニウム粒子の光に淡く照らされたツンデーレマークⅡが姿を現すや、外出自粛令を無視して集まっていた物見高い群衆が、


「頑張れ、ツンデーレマークⅡ!」

「頼むぞ、ツンデーレマークⅡ!」

「負けるな、ツンデーレマークⅡ!」


 思い思いにわめき立て、辺り一帯に耳がおかしくなる程の喧騒が巻き起こり、


「ツンデーレ! ツンデーレ! ツンデーレ!」


 案の定、その喧騒は「ツンデーレ」コールへと一本化されて行く。もう夜中なのにいい近所迷惑である。


「ああああっ、もうっ!」


 カットした部分をこれでもかとばかりにペーストされまくり、言葉にならないやるせなさに襲われてコックピットの中で地団駄を踏むエーレ。


「熱くならないで、エーレ。負けるわ」


 もう自分の名前に関して諦めの境地に達しているツンデーレマークⅡが、棒読みでエーレを諭す。


 心を落ち着かせようと大きな深呼吸をしてからエーレは、


「皆さん、まだ危険かもしれないので、政府の指示に従い、大人しく家で待機してください! その間に私が宇宙に行って、カリカリ博士を倒して来ます!」


 ツンデーレマークⅡのスピーカーを通して群衆に注意を呼び掛けた。


「これで大人しく帰ってくれるといいんだけど」


 そんなエーレの意に反して群衆はさらに盛り上がり、もちろん帰る者など一人もいない。


「私達がいなくなればすぐに帰ると思うわ。行きましょう、エーレ!」


 「エサがなくなれば害虫はいなくなる」のと同じ理屈に従い、エディロランドに向かって飛び立つツンデーレマークⅡ。 


 が、当のエディロランド上空まで来てみれば、そこにも広場を取り囲む様にしてさっきの倍以上の群衆が押し掛けており、アイドルのライブよろしく色とりどりに光る棒を振っていた。


「ツンデーレ! ツンデーレ! ツンデーレ!」


 そして当然の様に始まる、熱い「ツンデーレ」コール。


「なんで皆、家で大人しくしてくれないの! って言うか、遊園地側もあっさり人を入れないで!」


 コックピットの中で叫んでから気を取り直し、


「皆さん! まだ危険な状況は続いています! 後は私達に任せて、速やかに家に戻ってください!」


 と真剣な口調で呼び掛けるエーレ。


 しかし群衆はこれを、


『べ、別に、私達の為にこんなに応援に来てくれて、う、嬉しくなんかないんだから!』


 といった具合に脳内でツンデレ変換してさらに盛り上がり、もちろん帰る者など一人もいない。


「あの人達は好きにさせておいて、輸送機が来たら速やかに宇宙に飛び立ちましょう、エーレ」


 諦めの境地のツンデーレマークⅡ。


 このシーンについてランゲ監督は、


「大会でお馴染みの『ツンデーレコール』ですが、映画の中ではコミカルにする為に、ちょっとエーレさんが鬱陶しく感じるという演出にしてみました!」


 と説明する。


「実際、鬱陶しいです! 応援してくれるのはありがたいですが、アレは私を揶揄している様にしか聞こえません!」


 と本音を言えたらどんなにスッキリするだろうかと思いつつ、


「鬱陶しいと思った事はありませんが、このシーンについては、皆さんもきっと演出と割り切って楽しんでくれると思います」


 心にも無い事を言ってその場をしのぐ本物のエーレ。

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