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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」
559/635

◆559◆

 エーレマークⅡを宇宙仕様のツンデーレマークⅡに改装する合間に、


「知っての通り宇宙は真空だ。機体のわずかな損傷が原因でパイロットがあっけなく死亡するケースもある」


 しれっと怖い事を言う父ムートの指示に従い、ここまでずっと着ていた稽古着から正式なパイロットスーツに着替えるべく更衣室に向かうエーレ。


「あくまでも子供向け映画なのでお色気は抑えています。が、主人公の着替えシーンは、『戦いに臨む覚悟』を示す、という重要な意味も持っているのです!」


 このシーンの必要性について力説するランゲ監督だったが、映像を見る限り肝心な部分は隠れているものの、うなじ、背中、腹、へそ、太もも、膝、つま先、と肌色成分が多い仕上がりになっており、


「いいですねー。魔法少女モノの全裸変身バンクに勝るとも劣らないお着替えシーンで、ちっちゃい女の子が大好きな大きいお友達のハートを一網打尽ですよー!」


 空気を読まないコルティナによって、その真の必要性が身も蓋も無く暴露された。


 が、本物のエーレがこれに苦情を申し立てなかったのは、


「ウチの稽古着が脱ぎ方も含めてかなり細かい所までリアルに再現されていて、正直驚きました」


 時間にして十秒足らずの短いシーンに注ぎこまれた無駄に膨大な労力に感動してしまったかららしい。たとえ大きいお友達を釣り上げる為の露骨なサービスだとしても、情熱を以て作られたのならば人の心を打つのである。


 こうして劇中で着替え終えたエーレが凛とした表情で更衣室を出たその時、地下格納庫に、


「愚かなる地球の諸君に告ぐ! 私が神だ!」


 突如カリカリ博士の偉そうな声が響き渡った。格納庫は音がやたら反響するのでうるさい事この上ない。


「何、これ!?」


 凛とした表情から、一瞬で鳩が豆鉄砲を食らった様な表情になるエーレ。改装中のエーレマークⅡの所まで急ぎ駆けつけると、父ムートが、


「どうやらカリカリ博士はテレビ、ラジオを始めとして、有線無線を問わず諸々の通信網をジャックしたらしい。これでは作業が続けられん」


 一昔前ネットに溢れていたブラクラよろしく、どうやっても消えないカリカリ博士の得意げな顔がアップで映し出された大型モニターを前にボヤいていた。


 カリカリ博士の声は地下格納庫だけでなく、地上でも街の防災無線用のスピーカー等から大音量で流されており、


「あれはカリカリ博士の声だ!」

「我々の蜂起は成功したんだ!」

「カリカリ団に栄光あれ!」


 ロボット軍団による蜂起が失敗に終わって片っ端から逮捕されつつあったカリカリ団のメンバー達は、それを聞いてにわかに活気を取り戻し、あちこちで喜びの声を上げる。


 が、カリカリ博士が続けて、


「これより神となった私は、地球の諸君を粛清する!」


 と言うに及び、


「え?」

「は?」

「粛清?」


 喜びの声は疑問の声に変わり、


「私の計画に協力してくれたカリカリ団のメンバーの諸君には感謝する。が、それはそれ、これはこれ。皆まとめて安らかに抹殺されるがよい!」


「話が違うぞ!」

「エディリア政権を乗っ取るんじゃなかったのかよ!」

「何が『安らかに抹殺』だ、バカ野郎!」


 ここに至って、自分達が騙されて利用されていただけと言う事にようやく気付き、今度は興奮した猿の様にキーキーと喚き始めるメンバー達。


「そして諸君は、天で待つ私の元に召されるであろう!」


「召されたくねえよ!」

「てめえ一人で召されてろ!」

「ぶん殴ってやるから、天から降りて来い!」


 遥か上空にいるので誰も突っ込みを入れられないというもどかしさの中、カリカリ博士の異常な演説は続く。

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