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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」
555/631

◆555◆

 場面切り替わって、再びレングストン家の本部道場。


 道場生と職員は既に別の避難場所に移動しており、建物内部はもぬけの殻となっていた。


 そんな無人の道場の前に敵のロボットが一体、上空から舞い降りる。


 腹部のハッチが開くと、てっきりエディロランドで主力部隊の陣頭指揮を執っているものと思われていた変態仮面、もといカリカリ博士が姿を現した。


 最初から主力部隊でなく、その外郭でエーレマークⅡの足止め役を担う雑兵に紛れ、隙を見てここまでやって来たのである。 


 カリカリ博士はテレビのリモコンの様な機械を道場の方に向け、「何か面白い番組やってないかしら」とザッピングする主婦の様にボタンをポチポチ押し始めた。


 と、例の立体駐車場的なからくり仕掛けが作動。道場の建物が上方にせり上がり、その下の巨大格納庫に通じる穴が現れる。


 ロボットはコックピットのハッチを閉めてからその穴の中に身を投じ、光る粒子を足と背中から噴射しながらゆっくりと地下へ降りて行く。


 格納庫まで辿り着いたロボットはキョロキョロと辺りを見回し、すぐに片隅にある物置に目を付けた。カリカリ団の戦闘員の一人が立てこもったものの、エーレによって壁越しにボコられたあの物置である。エーレにボコられた戦闘員は既に回収されていたが、エーレが開けた壁の穴はまだぽっかりと開いていた。


 ロボットが物置の側まで歩み寄ってちょこんと正座すると再びハッチが開き、中にいたカリカリ博士は折り曲げられたロボットの膝を中継点にして格納庫の床まで軽々と飛び降りる。


 小さなペンライトを片手にドアが開いたままの物置の中に入り、あちこち照らした後、隅に置いてある細長い箱に注目する。箱の上面には「エーレニウム粒子増幅装置」と書かれており、とても分かり易い。 


 箱の蓋を開けると、中に抜き身の長剣と短剣が収められていた。エーレがエーレマークⅡを起動したのとほぼ同じ形状のものである。


「これで私の計画は成就する!」


 右手で長剣、左手で短剣を持って高々と差し上げ、ほれぼれとその二剣を眺めるカリカリ博士。傍から見ると危ない刀剣マニアか犯行前の通り魔と言った方が早い。


 この二剣をコックピットに持ち帰り、座席の足下に刺さっていた別の二剣を引っこ抜いた後で、入れ替わりに突き刺すカリカリ博士。その瞬間、ロボットの体が金色に輝き出したが、ちょこんと正座したままなので少し間抜けである。


「見せてもらおうか! 通常の百倍の性能とやらを!」


 キンキラキンにライトアップされたカリカリ博士がそう叫ぶと、ハッチが閉まり、正座していたロボットはすっくと立ち上がって再び地上に通じる穴へ上昇して行った。


「――以上、『敵の手に秘密兵器が奪われてしまって、さあ大変』なシーンでした! それはともかく、『百』と言えば『金色』ですよね!」


 このシーンについて満足げに解説を加えるランゲ監督。しかし、本物のエーレには何が「ですよね」なのかさっぱり分からない。


 細かい所で一般人に分かりにくいオマージュをアレコレ仕込みたがるのはマニアの悪い癖である。


 この物語とはまったく関係ないが、この収録の約三年前、サムライの国ではとある高校の中庭に展示されていた全裸の青年ブロンズ像が金粉ショーよろしく何者かによって全身金色に塗りたくられ、両肩に「百」と書かれるという珍妙な事件が起きていた。


 犯人は傍迷惑なロボットアニメマニアである事はほぼ間違いない。

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