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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」

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◆549◆

 大統領と父親を救出したエーレマークⅡとエーレは、続いて占拠されているエディリア警視庁の解放に向かう。


「警視庁には三体のロボットを配備してる様ね」

「他から増援が来る前に一気に叩くわよ、マークⅡ!」


 敵ロボットの位置を示す地図で警視庁周辺の状況を確認するエーレマークⅡとエーレ。


 一方、警視庁を制圧している三体のロボットもエーレマークⅡの襲来を察知し、


「来たぞ! ちっちゃい奴だ!」

「思ったより素早いな、ちっちゃい癖に!」

「ちっちゃいが中々高性能の様だ! 油断するな!」


 警視庁の前の道路に集合してこれを迎え撃つ態勢を取る。


「なぜか無性に腹が立つんだけど、エーレ!」

「気が合うわね! 私もよ、マークⅡ!」


 この手の話題に関しては妙に勘が鋭いちっちゃなエーレマークⅡとエーレが怒りと共に上空から急降下して警視庁前に着陸すると、三体の敵ロボットは大きく間合いを取って後退し、


「『ジェット串団子アタック』を仕掛けるぞ!」

「おう!」

「おう!」


 串に刺さった三つの団子の如く縦一列に並んで剣を構え、背中と足元から光る粒子を噴射して地上から少し浮かび、そのままエーレマークⅡに向かって突進を開始した。


「来たわ、エーレ!」

「アレをやるわよ、マークⅡ!」


 この突進に対し、エーレマークⅡは短剣を素早く先頭の敵ロボットに向かって投げつける。


 短剣は先頭ロボットの胸に突き刺さり、機能を停止したこのロボットが失速して前方にスライディング土下座よろしく四つん這いに倒れた所へ、二番目のロボットが勢い良くつまづいて先頭ロボットの背中の上に倒れ込み、さらにそこへ勢いが止まらない三番目がつまづいて二番目の背中の上に倒れ込んでしまう。


 分かり易く言うと、親ガメの上に子ガメを乗せてさらにその上に孫ガメを乗せた状態。


 そこにエーレマークⅡが長剣を両手で持って輪回しの棒の様に極端な下段に構えた状態で突撃する。


「『秘剣ちゃぶ台返し』!」


 エーレが技名を叫ぶのと同時に、エーレマークⅡは垂直に三つ重なった敵ロボットの頭部から胸部までを一気に下からすくい上げる様に斬り裂き、斬られた三体のロボットは引っ繰り返されたちゃぶ台と皿と料理の様に宙を舞った。スローモーションで。


「俺をちゃぶ台にしたあ!?」


 一番下の敵ロボットのパイロットが無念の叫び声を上げる。


 この警視庁前の戦闘シーンについて、


「このシーンを入れるべきか入れないべきかは製作スタッフの間でも大いに議論になりました」


 いつも自信満々のランゲ監督が、珍しく少し恥ずかしそうに解説する。


「まあ、リアリティーの無い、やたら無茶苦茶な技と技との激突ですからね。レングストン家はもちろん、他流派にもこんな技はありません。子供向けのフィクションではありだと思いますが」


 本物のエーレがそう答えると、


「そう、小さい子はこういう無茶苦茶な技が大好きなんです! 技名も『串団子』とか『ちゃぶ台』とか身近な物から取ると大喜びですし!」


 すぐに元気になるランゲ監督。


「確かに喜んで真似しそうですよね。じゃあ、何が問題だったんです?」


「いやあ、その。この敵ロボットのパイロットが『俺をちゃぶ台にしたあ!?』という台詞を叫ぶ所で、


『流石にそれはやり過ぎです、監督』

『このシーン、その台詞が言いたかっただけなんじゃないですか、監督』

『時には思いとどまる勇気も必要です、監督』


 と反対の声が上がって」


「?」


 その説明を聞いてもなお、何が問題なのか全く分からない、といった表情のエーレ。 


「その気持ち、よーくわかります、監督。でも芸人には、皆から反対されてもあえて行かねばならない時がありますよねー」


 横からランゲ監督にフォローを入れるコルティナ。普段仲間達からその奇行について「自重しろ」と言われている者同士、通じ合うものがあるのかもしれない。


 結局ランゲ監督はこのシーンを入れる事を監督権限で決定し、後に映画が公開されると目論見通り小さい子供達に大好評だったのだがそれはまた後の話。

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