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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」

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◆547◆

 首都エディロの上空を飛行しながら、エーレマークⅡは今後の方針について、自分を操縦するエーレに手短に説明する。


「ロボットの倒し方は大きく分けて三つ! AIがある頭部を破壊するか、動力源のエーレニウム粒子を全身に供給する胸部を破壊するか、攻撃に使用する部位を直接破壊するか!」


「人間で言うと、脳か心臓か手足をヤればいいのね!」


 同じ思考パターンなだけあって、すぐにエーレマークⅡの言わんとする事を読み取るエーレ。 


「一つ注意しなきゃいけないのは、コックピットを狙うのは悪手って事! 敵パイロットが死んでも、頭部のAIが機能している限り、ロボットは攻撃して来るから!」


「まるで蛇並の生命力ね! あ、べ、別にあなたを蛇だって言ってる訳じゃないわよ!」

「わ、分かってるわ! そ、そんな事全然気にしてないから!」


 同じ思考パターンなだけあって、思わず同時にツンデレ口調になってしまうエーレとエーレマークⅡ。


「と、ともかく、これが今、敵のロボットがいる位置!」


 気を取り直したエーレマークⅡがそう言うと、正面モニターに首都エディロの地図が別ウィンドウで映し出され、さらにそこへ敵のロボットの位置が黄色く光る無数の点で示される。


「結構な数ね」


「全部で百一体! 一体だけでも現代兵器を圧倒する厄介なロボットよ!」


「でも、同じロボットのあなたなら倒せる!」 


「そう! 逆に言うと、ロボットを全部倒してしまえば残った奴らは烏合の衆! 軍と警察で十分鎮圧出来るわ! そしてこれが私達の現在地!」


 今度は地図上にエーレマークⅡの位置を示す赤く光る動点が現れる。


「私以外のロボットは皆敵よ! 見つけ次第叩っ斬ればいいわ!」


「じゃあ、まずこいつね!」


 自分達がいる場所から一番近い点を選ぶエーレ。


「了解! 行くわよ!」


 そのロボットに向かって進路を変えつつ、降下して行くエーレマークⅡ。


 降下先には、黒を基調色とした鎧武者を彷彿とさせる姿の敵ロボットが一体、銃を抱える様にして街の交差点に立っていた。


 ふと、上空で光った点に気付き、


「何だありゃ?」


 とばかりにそちらを見上げる敵ロボット。


 遥か彼方から、光る刃を持つ左の短剣を前に突き出し、同じく光る刃を持つ右の長剣を大きく振りかぶった状態のエーレマークⅡが、猛スピードでこちらに迫っているのを認識するが、時既に遅し。


 敵ロボットがあわてて銃を構える前に、そのすぐ脇を高速ですれ違いざま、手にした長剣を目にも留まらぬ速さで一振りし、そのまま相手の後方へ着地するエーレマークⅡ。激しい衝撃音と共に足下の道路が大きくすり鉢状に凹んでヒビ割れ、破片が舞い上がる。


 次の瞬間、首から切断された頭部が地面に落ち、続いて前方に、ズシャアッ、と倒れる敵ロボット。


「これでこのロボットはもうただのガラクタよ! 次に行きましょ!」


 屠った敵を振り返りもせず、地を蹴って飛翔するエーレマークⅡ。


 このシーンについてランゲ監督は、


「ロボットものの初戦闘シーンは主役ロボの性能を視聴者にお披露目する大事な所です! 色々な演出方法がありますが、ここはあえて、『最初の敵はザコであればあるほど良く、勝利は圧倒的であればあるほど良い』、という古典的な手法を選びました!」


 と解説し、


「要はゲームのチュートリアルと同じですね」


 ロボットものに詳しくない本物のエーレも納得した模様。


「本当はトドメを刺す前に、もっと多彩な攻撃をさせたかったんですが。ヨーヨーやコマやボールを敵にぶつけたりして!」


 しかし続くこのランゲ監督の発言に関しては、


「戦う相手を子供のオモチャで面白半分にいたぶるのは、武芸者としていかがなものでしょうか」


 ロボットものに詳しくないエーレはかなり納得しかねる模様だった。

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