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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十八章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅡ 「本編」
543/635

◆543◆

 小学生でも無謀だと分かる突発的な考え無しの行動により、ほとんど自滅に近い形で悪の組織にあっけなくつかまってしまったムート。


 剣術の名門の当主が縛られて床に転がされているその情けない姿をエディリア全土に晒されてしまったものの、武芸者の意地を見せたのか、咬まされていた猿轡を何とか緩める事に成功したムートは、


「地下倉庫に行くのだ、エーレ! そこにこの局面を打開出来る鍵がある!」


 とカメラに向かって叫ぶ。


 もちろんその直後に画面の外から姿を現した悪の戦闘員によって、今度は緩まない様にしっかり猿轡を咬まされ直されていたのだが。


「何だかよく分かりませんが、分かりました! お父様!」


 稽古場のテレビで道場生達と一緒に父ムートの情けない姿を見ていたエーレはすっくと立ち上がり、


「皆さんはここで引き続き待機してください!」


 と言い残すや、投げられたボールを追いかける子犬のごとく稽古場を出て地下倉庫へと走り出す。


 主にテントやパイプ椅子や長机やその他稽古で使う用具の類が収納されている地下倉庫の中に入って照明を点け、辺りをキョロキョロと見回すが、急に気付いた様に、


「そもそも『鍵』って何!?」


 投げられたボールを見失い困惑してクゥーンと鳴く子犬のごとくその場に立ち尽くすエーレ。困り顔がちょっと可愛い。


 その時どこからともなく、


「壁に掛かっている二本の剣を取りなさい! 早く!」


 ちょっとエコーの掛かった女の子の声がした。


 これぞ、本物のエーレが演じる「エーレマークⅡ」の第一声であり、ここから最後まで本物のエーレは収録ブースに入りっぱなしで「エーレマークⅡ」を演じ続ける事となる。


「分かったわ!」


 プロの声優が演じる劇中のエーレは、この指示に従って長剣と短剣が掛かっている壁の前まで行き、


「これを取るのね! えいっ!」


 気合いの声と共に、右手で長剣、左手で短剣を同時に取った。


 次の瞬間、足下の床がパカッと下に開き、


「ぎゃあああ!」


 両手に剣を持ったままの状態でそこに落ちるエーレ。


 落ちるとすぐに直径一メートル程の巨大なパイプの入口が待ち受けており、エーレはそのままなすすべも無く、螺旋状に設置されたパイプの中をウォータースライダーよろしく下へ下へと滑り落ちて行く。


「昔のロボアニメはこういう所でも子供達を楽しませてくれたものです! 子供達はテレビの前で、『いいなあ、自分もああいう大きなすべり台をすべってみたいなあ』と、さぞワクワクしていた事でしょう!」


 かつてロボットの搭乗シーン等でよく見られた楽しいギミックについて解説してくれるランゲ監督。


 そんな監督の思惑とは裏腹に、悲鳴を上げながらぐるぐると猛スピードで滑り落ちて行くエーレ。


 ダストシュートから飛び出すゴミ袋の様に、最後にエーレが、しゅぽーん、と壁に開いた穴から吐き出された先は、コンクリと鉄骨で構成された無機質な巨大格納庫で、


「何……これ?」


 その真ん中には身長十数メートルのちびっこ剣士風なフォルムの巨大人型ロボットが立っており、床に尻もちをついたちっちゃなエーレを見下ろしている。


 と、エーレの近くに置いてあった大型液晶モニタが点き、そこに現在囚われの身となっているはずの父ムートの顔が大アップで映った。


「お父様!」


 画面に向かって叫ぶエーレに、


「エーレよ、お前がこの映像を見ている時、私はもうこの世にいないだろう……」


 と真剣な表情で語り始めるムート。


「いや、いますから! ついさっき、ピンピンしてる所を全国放送で見たばっかりです!」


 思わず激しいツッコミを入れてしまうエーレ。


「やはり、バカ映画ファンにとってレングストン家のムートさんと言えば、何と言っても『天然ボケ』です!」


 このコントの様な演出に大満足なランゲ監督。

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