◆534◆
無駄に行動力とコネがある愉快犯ことコルティナの暗躍により、「劇場版エーレマークⅡ」とコラボしたアトレビド社の菓子が、ララメンテ家の全国大会の物販コーナーで先行販売される事になったと聞いて、
「何でララメンテ家がレングストン家のエーレ関連の商品を売るんだよ!」
エディリアの人々は一斉にツッコまざるを得なかった。
「権利とか契約の関係って一体どうなってんだ? アウフヴェルツ社とアトレビド社は業種がバッティングしないからいいとして、レングストン家とララメンテ家はガチの競合関係だろ」
「競合する二つの少年漫画誌が出版社の垣根を越えてコラボする様なもんかな。実際、そういう企画やってた雑誌があった」
「この前はコルティナがレングストン家の大会スタッフの制服を着て記者会見してたし、やりたい放題にも程がある」
などと色々と憶測を巡らした末に、
「コルティナのおかしな言動をまともに考察しようとするだけ無駄だ」
と皆が納得し、
「どれ、面白そうだから物販コーナーだけでも見に行ってみるか」
大会初日のほぼ身内しか来ない小学生の部へ、好奇心に駆られた野次馬が押し寄せる。
そこの物販コーナーで、本当に「劇場版エーレマークⅡ」のイラストが入ったパッケージ仕様のお菓子が山と積み上げられ、さらには「ララメンテ家は映画『劇場版エーレマークⅡ』を応援しています!」と書かれたポップまで置いてあるのを目の当たりにした彼らは、
「本当に売ってやんの。しかもあんなに大量に」
「本家のグッズより、『劇場版エーレマークⅡ』とコラボした菓子の方が多いじゃねえか。ララメンテ家はプライドってもんがないのか」
「こりゃ菓子を売ってるんじゃない。魂の大安売りだ」
そのシュールな光景に笑いつつも、商品の山を見ている内に、
「どうせここまで来たんだし、菓子位なら買ってもいいか。そこそこ安いし、普通に食えるし」
購買意欲を刺激され、気が付けば買った菓子を食べながらパッケージに描かれているイラストをしげしげと眺めている自分に気付き、
「……コルティナの策にまんまとハマってしまった」
それはまるで、スーパーで買う予定のなかった物を「今日の目玉商品」という言葉につられてついつい買い込んでしまった時の心境に似ていたという。




