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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十七章◆◆ ちっちゃな剣士が操縦する巨大ロボットについてⅠ 「宣伝」
515/631

◆515◆

「あなたにしては慎重な判断ですね、コルティナ」


 普段世間一般の常識にとわられる事なくふわふわと空飛ぶ風船の様に自由に生きているこの親友が、絶好のチャンスを活かさなかった事に対し、少し意外そうな表情をするシェルシェ。

 

「慎重になるざるを得ないよー。特に全国大会も一般の部まで来ると、今まで以上に悪い噂が立たない様に気を付けないとねー」


 自由にふわふわしていると見せかけて、致命的なリスクを回避するだけの思慮分別は持ち合わせているらしいコルティナ。そういう意味では風船よりドローンに近いかもしれない。


「ふふふ、確かに他家から一般の部への遠征は、ある意味道場破りと見なされてもおかしくはありません」


「道場破りどころか、実際は興行収入をブーストして道場経営を助ける福の神なんだけどー」


「感謝してますよ。実際、あなたとエーレが来るのと来ないのとでは、大会の興行収入が二ケタは違うでしょう」


「こっちもミノンとパティに来てもらってかなり潤ってるから、お互い様だよー。客寄せには有名人を呼ぶのが一番だよねー」


「『劇場版エーレマークⅡ』にエーレ本人を起用するのと同じですね。あなたもモブ役で参加するとか」


「私の出番は本当に一瞬だけだよー。でもその一瞬、映画を観に来てくれた子供達が、『あ、コルティナみっけ!』って、喜んでくれるといいなー」


「ふふふ、群衆の中に紛れた主人公を探す絵本の様ですね」


「子供ってそういうの好きだよねー。で、モノは相談なんだけどー」


「何でしょう?」


「シェルシェも映画に出ないー? ほんの一瞬だけでいいからー」


 唐突に「ちょっとお茶しない?」位の軽いノリで映画出演を打診するふわふわドローン。


「ふふふ、マントノン家の当主である私まで客寄せに使う気ですか、コルティナ?」


 この親友の奇行には慣れているので驚かないシェルシェ。


「シェルシェが映画に出るメリットは三つ程あるよー」


「伺いましょう」


「一つ目は、エーレの映画にシェルシェと私が友情出演する事で、御三家の仲の良さを世間にアピール出来る事ー。今度の全国大会の一般の部は、シェルシェの言う通り道場破りのイメージが強いから、それを和らげるのに役立つんじゃないかなー」


「一理あります。あくまでも他家への遠征は普段剣を交える事のない選手との技術交流が主目的であり、決して営業妨害を意図するものではない、という立場を明らかにするのですね」


「そー。一言で言うと、『御三家は仁義なき抗争をする程仲悪くないよ』って事ー」


「ふふふ、私達は裏社会の住人ですか」


「エーレはともかく、シェルシェと私はちょっと裏が入ってるかもねー。政財界とか業界とか。それはさておき、メリットの二つ目は、シェルシェが構想してる『統一ルールによるスポーツ化した剣術全国大会』開催の布石にもなる事ー。御三家が流派を超えて一つのイベントに参加したっていう実例を残しておけば、それが小さいイベントであっても、後々の大きなイベントにまで影響を及ぼすと思うんだー。裁判の判例みたいにー」


「なるほど。『以前にも一緒にこういう事をやったでしょう。あれと同じです』、と内外を説得する材料として使うのですね」


「実際は同じじゃなくても、人は錯覚するからねー。『前例があるなら、いいんじゃないか』って具合にー」


「ふふふ、大きな一手を打つ為の小さな仕掛けは大好きですよ。で、メリットの三つ目は?」


「きっと楽しいから三人で遊ぼうよー、ってお誘い。アニメ映画のアフレコに参加出来るなんて、滅多にない機会だよー?」


 無責任な事をふわふわとのたまうコルティナ。さながら飛行禁止区域にふわふわと突っ込んで来る正体不明のドローンの様。


「ふふふ、映画製作はお遊びじゃありませんよ、コルティナ」


 言うだけ無駄だと分かっていても、一応ドローンに警告しておくシェルシェ。


「真剣にやるお遊びは楽しいに決まってるよー、シェルシェ」


 答えになっていない事を言って煙に巻くドローン。


 シェルシェは少し笑ってから、


「いいでしょう。『出演させて頂きます』と先方に伝えてください」


 このふわふわな説得に応じ、映画の客寄せに使われる事を快諾した。

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