◆493◆
「今やすっかりエディリアの国民的癒し系マスコットキャラのエーレだけど、マスコットである前に一人の恋するちっちゃな女の子でもある訳でー、早く幸せな結婚にゴール出来る様に世話を焼いてあげなくちゃって考えるのは、親友として当然の事だと思うのー」
エーレ本人が聞いたら、「ツッコミ所が多すぎて、どこからツッコんでいいのか分からんわぁ!」、とキレそうな台詞をふわふわと吐くコルティナ。
「同感です。エーレは私達と違って裏工作や権謀術数などとは縁遠い、太陽の下が似合う真っ当なカタギの女の子ですからね」
エーレ本人が聞いたら、「あんたら、いつから暗黒街の顔役になったのよ」、とドン引きしそうな台詞を返すシェルシェ。
「そんな恋する小動物が、剣術界や企業の都合で、いつまでもCMタレントを続けさせれて幸せを逃す事になったら可哀想だよねー。CM撮影で死ぬまで走らされるエリマキトカゲみたいでー」
「ふふふ、そのCMは抗議が殺到して放送中止になったとか。とはいえエリマキトカゲ、もといエーレが今やアウフヴェルツ社に莫大な利益をもたらすドル箱である事を考慮すれば、そう簡単には引退させてもらえないでしょう。」
「でもタレントをやめる事自体はそんなに難しくないよー。ちょっとテレビに出なくなっただけでも、その存在を急速に忘れて行くのが世間一般だしー。たまに死亡説が流れる事もあるけどー」
「やめる事自体は、ですね。問題はアウフヴェルツ社がエーレの降板をあっさり認めるかどうかです。想い人にしてアウフヴェルツ家の三男エーヴィヒさんの口から、『やめないで欲しい』と懇願されれば、『しょ、しょうがないわね』などと言いつつ、エーレはズルズル関係を続けざるを得ないでしょう。ジゴロに食い物にされる男運の悪い女の様に」
「うふふ、シェルシェは分かってないねー。エーヴィヒさんはそんな極悪非道なジゴロじゃないよー。エーレの為なら実家を敵に回す事も辞さない、言わば白馬に乗った王子様だからねー。もしくはエーレの為ならいつでも死ねる覚悟がある大きいお友達ー」
「随分とスケールに差がありますが、いずれにせよ並々ならぬ愛を感じる例えです。どちらにしてもエーレは幸せ者ですね」
「まとめると、実家を敵に回して白馬に乗った死にかけの大きいお友達に愛されるエーレは幸せ者って事だねー」
エーレ本人が聞いたら、「お前ら、人の幸せを何だと思ってる!」、と声を荒げてツッコミの一つも入れる所だが、本人不在につき、二人の言いたい放題はさらにエスカレートして行く。




