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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について

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49/636

◆49◆

 バシャバシャと水面を叩き、溺れまいと必死にもがく甲冑を、男子学生と女子学生の二人は、桟橋の上から容赦なくオールでつんつん突っつき続ける。傍目には笑えるが、地味に残酷なシーンだ。


 やがて、甲冑は我が身の重さに耐えかねて、湖の底に沈んで行く。


「やった!」

「やったわ!」


 それを満足そうに見届けた二人は桟橋の上でぎゅっと抱き合い、幸せなキスをして終了。


 二人がイチャつきながらその場を去ると、誰もいなくなった桟橋と湖を映したまま、悲哀を帯びた物寂しげな曲が流れ、画面下方からエンドクレジットがせり上がって来る。


 一時間半以上ずっと、ハラハラドキドキビクビクし通しだったエーレも、ここでようやくほっと一息つく事が出来た。


「うふふ、まだ、安心するのは早いよー。こういう映画は、エンドクレジットが流れた後に、何か起こる事が多いから」


 コルティナにそう言われ、この上何が起こるのか、と不安な面持ちで身構え、画面に集中するエーレ。


 と、エンドクレジットに見覚えのある名前が現れた。


『甲冑 ムート・レングストン』

 

 それは紛れもなく、レングストン家の現当主にしてエーレの実の父親の名前である。


「レングストン家の当主が、こんなモンに出るなあっ! しかも、よりによって『甲冑』って!」


 思わず取り乱し、絶叫してしまうエーレ。


 意外な事実に、コルティナが笑いながら、


「これ古い映画だから、まだ当主じゃなくて、次期当主の頃だと思うよー」


「どっちでもええわ!」


 訂正するものの、それを一喝するエーレ。


 やがてエンドクレジットが終わると、突然、ザバァ、という水音と共に、湖の水面から甲冑の籠手が上に突き出て、桟橋の端をガシっと掴んだ。


 続いて甲冑の頭部が姿を現し、こちらを向いた瞬間、大アップになって画面が停止。ここで、今度こそ本当の終了である。


 ホラー映画によくあるベタなエンディングであったが、エーレはスクリーンに映っている若き日の父親に向かって小クッションを投げ付け、


「こっち見んな! それと、もうちょっと仕事選べ、お父様!」


 やり場のない怒りに我を忘れていた。

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