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大会の熱狂と興奮がまだ人々の記憶に新しい中、その中心となって活躍した天才美少女剣士達を起用し、「全国大会の応援旗に描かれていたキャラのイメージに合わせる」一連のCMは、計算通りの大成功を収め、
「世界的な不景気の逆風が吹きまくる中、私達がCMに出てる企業の業績は、とっても活気づいてるって話だよー。旗だけにー」
アトレビド社のお菓子を手土産にレングストン家に遊びに来ていたコルティナが、ふわふわとそんな事を言う。
「エディリア経済の活性化に、私達がわずかでも貢献出来たのなら何よりだわ。あんなしょうもない手段で貢献したくはなかったけど」
複雑な表情で、応接間のテーブルの上に並べられた手土産の菓子から、小さなどら焼きを一つ選び取って口に運び、
「美味しいわね、これ」
すぐに、ぱああっ、と明るい表情になる、分かり易いエーレ。美味しいお菓子は人を幸せにする。
「マントノン家の大会の応援の時、私が食べてた巨大どら焼きと同じ物だよー」
「よくあんなサイズのお菓子を一人で食べようなんて思ったわね。いい宣伝にはなったでしょうけど」
「特注品で結構高いのに、あの大会の後、アトレビド社に注文が殺到したみたいだよー。今日もここに持って来ようかな、とも思ったんだけどー」
「それだけでお腹一杯になって、他のお菓子が入らなくなっちゃうわ」
幸せそうに微笑むエーレ。
「だから小さなお子様向けに、ミニサイズをご用意いたしましたー」
「誰が小さなお子様だ!」
結局、お約束のオチに持っていかれ、声を荒げてツッコんでしまうちっちゃなエーレ。
「まーまー、そんなに怒らんとー、お茶でも飲んで落ち着きんさい」
「あんたは田舎のおばあちゃんか」
ふわふわな口調が絶妙におばあちゃんテイストなコルティナにツッコミを入れつつ、湯呑茶碗から緑茶を一口啜って、落ち着きを取り戻してから、
「でも、今回の一連のCMも大概よね。ロボにハナシカにマジシャンに怪獣って、ほとんど剣術に関係ないじゃない!」
ちょっと愚痴モードに入るエーレ。
「そんなエーレに、広告業界に代々伝わる、とってもいい言葉を教えてあげるよー」
「どんな言葉?」
「『画像はイメージです』」
「広告業界のいい加減さが、たった一言でよく表されてるわ」
呆れてため息をつき、軽く肩を落とすエーレ。




