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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十五章◆◆ 応援旗に描かれたキャラクターをCMに起用する商法について

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480/638

◆480◆

 アトレビド社のCMで、「八代目ふわふわ魔女」ことコルティナが演じてみせた無駄に気合いの入った名人芸に触発される形で、


「『大道芸人』を擁するこちらとしても、今回はアレに引けを取らない様なクオリティーのものをお願いしたいのですが」


 ヴェローチェ百貨店の広報担当は、「大道芸人」ことパティに難易度の高い芸を要求し、


「分かりました。豪華な衣装やセットやCG等に頼らず、『技』だけで勝負するストロングスタイルで行きましょう」


 パティもこの無茶振りを快く承諾する。


 こうして入念な準備期間を経て完成したヴェローチェ百貨店のテレビCMは、地味な絵面ながらも一度見た者を魅了せずにはおかない不思議な味のある映像に仕上がった。内容は以下の通り。


 場所はヴェローチェ百貨店のインフォメーションカウンター。カウンターを隔てた向こうに、黒い山高帽をかぶり、胸元をはだけた白いシャツに黒いベストという、応援旗に描かれたイラストと全く同じ格好のパティが座っているところからCMは始まる。


 まずシャツの袖を肘までまくって、両手に何も持っていない事を視聴者にあらためさせてから、右手を軽く横に出す。


 軽く手先をひねると、そこに突然一枚のカードが現れる。カードには高級化粧品の写真が印刷されている。


 右手をその状態で固定したまま、左手を伸ばしてカードを取り、カウンターに裏向きに伏せると、右手にまた一枚別のカードが現れる。そこには婦人服の写真が印刷されている。


 先と同じく、左手でそのカードを取ってカウンターに裏向きに伏せると、また右手に別の商品の写真が印刷されたカードが現れる。以下同様にして、次々と右手に現れるカードを左手で取ってはカウンターに置く動作が繰り返され、最後は一気に何十枚ものカードが扇の様に広げられて出現する。


 カードの扇を右手でカウンターに伏せ、既に置いてあるカードと一緒に両手でよく混ぜた後、一つの束にまとめて左手で持つ。


 左手だけでカードの束を二分割して、その一方を右手で取り、左手に残った分と合わせて空中でリフルシャッフルする。再び統合されたカードの束を左手に持ち、そこから右手で一枚ずつ取って、伏せた状態でカウンターの上に横一列に並べて行く。


 何枚か並べた後、今度はそのカードを端から一枚一枚めくって行く。すると、それぞれのカードには商品の写真ではなく、文字が一つずつ大きく印刷されており、全部めくり終わると、


「ヴェローチェ」


 という綴りが出来上がっている。


 全ての演技を終えたパティが、ウインクしながら右手で視聴者に投げキッスをして終了。


 もちろん最初から最後まで全編ワンカットの長回しであり、映像に編集等は一切施されていない。


 プロのマジシャンの演技指導を受けて製作されたこのCMは、目論見通り大好評となり、


「バラエティー番組で私にマジックを披露して欲しい、というオファーが増えました。この機会に、色々とマジックのレパートリーを増やしたいと思うのですが」


 そんな事を、姉のシェルシェに笑顔で報告するパティ。


「結構な事です。剣の修行の妨げにならない程度なら、何も問題ありませんよ」


 シェルシェも特に妹のやる事に異は唱えなかった。


 こうして姉のお墨付きを得たパティは後日、猛特訓の末に習得したマジックを、番組の収録の合間に共演している小さな子供達に披露してモテまくり、


「私は虎に翼を与えて野に放ってしまったのかもしれません」


 それを聞いたシェルシェはちょっと後悔したという。


 この様に、ナンパ目的でマジックを習得する輩は結構多い。

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