◆473◆
マントノン家の大会ではバイト警備員、レングストン家の大会では観客として、裏と表からこの大イベントを体感した全国格闘大会推進委員会(仮)のメンバー達は、一連の剣術大会が終了した後も、
「俺達も(全国格闘大会を)やりてえー!」
と、まるで成人向け動画を鑑賞した直後のバカ男子中学生の様に、興奮未だ冷めやらぬ状態のままであった。
元々、この委員会(仮)は格闘大会の開催を目標としてはいるものの、これまでは、
「格闘界が盛り上がって、俺達の懐も潤います様に」
などと、さもしい金儲けの手段を漠然と夢見ていたのが、
「何万人もの大観衆を俺達の計画したイベントで熱狂させてみたい!」
実際にそんな夢の様な光景をナマで見てしまったせいもあり、一気にロマンチックが止まらなくなってしまったのだ。
こうなると自然、各流派ごとの武芸に対するこだわりより、「いかにしてイベントを成立させるか」を重要視する様になり、統一ルール制定に関して、
「これだけは譲れん」
などと固執していた事についても、
「ああ、いいよ。そっちに合わせるから、早いとこ決めようぜ」
などといった具合に、次々と妥協が成立して行った。
「ついに委員会(仮)の皆さんが、叩き台としての統一ルール案(仮)を完成させたそうです。今後の公開合同稽古では、そのルールに則った稽古をメインに行うらしいですよ」
悪の組織の大首領、もとい委員会(仮)の影の支配者、マントノン家現当主シェルシェの元にも、その知らせが届き、
「思ったより早かったな。異なる流派間でのルール調整は、かなり難航すると見ていたが」
可愛い孫娘から書斎でその報告を受けた前々当主にして祖父のクペは、意外そうな顔をする。
「ふふふ。人は時として個人の小さなプライドより、多くの人々から認められる事を望むものです。マイナーからメジャーにのし上がりたいと願う時は特に」
そんな「全て私の計画通り」と言わんばかりの可愛い孫娘の笑顔に、少しゾッとするおじいちゃま。
この子は生きた人間を使って人形遊びをしているのかもしれない、と。




