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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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471/638

◆471◆

 レングストン家のマスコットキャラであるエーレに、良くも悪くも自流派の守護キャラであるコルティナが六連覇を阻止され、他流派に完敗を喫した形となったララメンテ家の一行は、大会終了後、祝賀会を開くつもりで予約していた高級ホテルの大広間で残念会を開いていた。


「思い起こせば六年前、まるで大陸間弾道ミサイルの様に突然流派の垣根を越えて飛びこんで来た、『不死身で無敵の殺人鬼』こと後のマントノン家当主シェルシェによって、選手一同皆殺しの目に遭いました。あの大会の後、残念会で食べたスイーツが悔し涙でしょっぱかったことー」


 残念会の冒頭、乾杯に当たり、ハンカチを目に当ててわざとらしい泣き真似をして見せるコルティナ。


「うそつけ、誰も泣いてなかったぞ」

「特にコルティナは、ひよこの形をしたケーキを美味そうに食べてて、すごく幸せな顔してたのを昨日の事の様に覚えてる」

「小芝居はいいから、早く乾杯しろ」


 仲間達から即ツッコミが入り、どっと笑いが巻き起こる。


「せっかく人が感動的に盛り上げようと脚色したのにー」


 すぐにいつもの調子に戻るふわふわお嬢様。


「捏造にもほどがある」

「ウチはいつから熱血スポ根気質になったんだ」

「熱血スポ根を地で行く、レングストン家の人達にあやまれ」


「まあ、それはそれとしてー」


「スルーかい」


「あの時の大虐殺を乗り越えて、その後の私達がある訳でー」


「乗り越えた、のか?」

「シェルシェさんが当主を継いだんで、二度目以降の虐殺がなくなっただけの様な気が」

「もしシェルシェさんがマントノン家の当主を継いでなかったら、コルティナの五連覇も危うかったな」


「だねー。ある意味ラッキーだったかもー」


「いや、そこは一応否定しようよ。エーレさんとかミノンさんとか、他の強豪にも失礼だし」

「『たとえシェルシェが来ようとも、ララメンテ家は私が守る!』とか、カッコよく決めてさ」

「どうせ来ないんだから、言ったもん勝ちだし」


「ウチの道場は私一人じゃなくて、皆で守るんだよー」


「お、何かいい事言った」


「皆が敵と戦っている時、私は影の大首領として、ついたての裏で声だけ出演するからー」


「特撮ヒーローもののラスボスになるつもりか」

「最終回に一度だけ姿を現して、あっけなくやられそう」

「もしくは童話に出て来るインチキ魔法使いみたいに、気球に乗って行方不明になる」


「実際、風船を付けたゴンドラに乗って海を渡ろうとして、行方不明になった男の人がいたよねー」


「知らんがな」


「皆さんも彼の冒険魂を見習ってー、失敗を恐れずー、果てしなく壮大な夢とロマンを胸にー、これからもふわふわと頑張りましょー」


「いや、行方不明はシャレにならんから」


「と言う訳でー、乾杯!」


「どういう訳だ!」


 強引な展開にツッコミが入りつつも、皆が手にしたグラスを持ち上げて乾杯し、立食パーティー形式の豪華な残念会が始まった。


 ふわふわなコルティナに率いられたララメンテ家の人達は、勝っても負けてもふわふわ通常運転。

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