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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について

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47/636

◆47◆

 蹴りを食らって甲冑が倒れた隙に、男子学生は女子学生が待つ部屋に猛ダッシュで駆け込み、急いでドアを閉め、


「今だ、ボタンを!」


 と叫ぶ。


 女子学生がすぐさま起爆ボタンを押すと、轟音と共にプラスチック爆薬が炸裂し、玄関のドアは外側に、その近くにおびき寄せられていた甲冑は内側に、それぞれ物凄い勢いで吹っ飛ばされた。


 屋敷全体が激しく振動し、男子学生と女子学生がいる部屋の調度品は滅茶苦茶に倒れ、天井からはシャンデリアが落下し、大きな音を立てて床と衝突する。


 しばらくして、床に伏せていた二人がゆっくり立ち上がり、すっかりゴミ屋敷の様になった部屋から出ると、正面玄関は周囲の壁ごと跡形もなく消滅して、ぽっかり大きな穴が開いていた。


 そこから無事外へ脱出した二人の内、男子学生が振り返って、まだ煙の立ち込める屋敷内に目を凝らしつつ、


「やったか?」


 と、こういう場合、最も言ってはならない言葉を口にする。


 案の定、カシャン、カシャン、という金属音が聞こえ、続いて煙の中から、血塗られた剣を手にした甲冑が姿を現し、二人をしつこく追い掛けて来た。


「やったか禁止ー」


 ようやく笑いが収まってソファーに座り直したコルティナが、嬉しそうに言う。絶対にこの子、普段からネットでテレビ番組を実況しているに違いない。


 男子学生と女子学生は急いで山道を逃げ、しばらく走ってから立ち止まり、


「ここまで来れば、大丈夫だろう」


 と、男子学生が言った瞬間、鬱蒼と茂る木々の間から、物理法則を無視してワープして来た甲冑が、二人の目の前に飛び出して来た。


 悲鳴を上げる女子学生の手を取って、再び山道を走る男子学生。


 その後、「二人が立ち止まる」、「甲冑が姿を現す」、「二人が逃げる」、の天丼パターンが何度か繰り返された後、二人は映画冒頭でバカップルが殺された湖の側までやって来る。


 その時、かなり疲弊している二人の遥か前方から、一台の車がこちらに向かって走って来るのが見えた。


 男子学生が道の真ん中に立って、そちらの方へ大きく手を振り、


「おーい! 止まってくれー!」


 と、大声で呼び掛けると、車は近くまで来て停止する。


 女子学生が運転席の方に回り込んで、


「追われているんです、助けてくだ――」


 と、言いかけてびっくり、車を運転していたのは、なんと甲冑本人だった。


 女子学生の悲鳴と、コルティナの笑い声が同時に上がる。


「あははははは! その発想はなかったー!」


 手を叩いて喜ぶコルティナの横で、不意を突かれたエーレは結構本気で驚いていた。本当に素直な、いい観客である。

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