表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

454/638

◆454◆

「頑張って、ティーフ。相手はすごく強くてふわふわで厄介だけれど、同じ人間よ」


 激励と共に送り出すエーレに、


「ああ。VRで何度も戦って研究した成果を、実物に思いっきりぶつけて来る」


 装着した防護マスク越しのいい笑顔で答えて、試合場へと向かうティーフ。対戦相手は今大会最有力優勝候補のコルティナである。


 しかし、試合場に向かう途中、


「とは言ったものの、あの人が同じ人間とは思えん。正直勝てる気がしない」


 後ろ向きな弱音が、つい口を突くティーフ。ふと見上げれば、観客席はコルティナの試合とあって大いに盛り上がり、ララメンテ家の応援団の「八代目ふわふわ魔女」を筆頭に、様々な魔女のイラストが描かれた応援旗があちこちで蠢いて、もとい威勢よく振られている。


「魔女、か。まったくもって魔女だな。もう、私みたいな普通の人間の手が届かない遥か上空を、あの人は魔法の箒に乗ってふわふわと飛んでる様なものだから」


 魔女の応援旗に影響されたのか、ティーフの弱音が段々メルヘンチックになって来た。


「コルティナさんだけじゃない。エーレもミノンも、剣を交える事はないがパティも、今はもう遥か空の上の住人だ」


 弱音の中で今をときめく美少女剣士達を、まるで死亡したキャラの様にまとめて空へ飛ばしてしまうティーフ。


「だが、負けるにせよ、最後の相手があの『ホームのコルティナ』なら悔いはない。むしろ最高の思い出だ」


 ティーフは既に、「来年から全国大会に参加しない」、という意志をエーレや他の仲間に伝えていた。ティーフだけでなく、他の高校三年生の選手達の中にも、「公式大会参加は今年限り」と決めている者は多い。進学や就職などの事情もあって、自然とそうなってしまうのである。


 だが試合場の中央までやって来たティーフの表情には、もはや一点の曇りもない。名誉の戦死を覚悟したサムライの様に。


 片や、いつも通りのふわふわとした足取りで試合場にやって来る「八代目ふわふわ魔女」ことコルティナ。防護マスク越しに見えるいつものふわふわな笑顔は、これから一席お笑いを申し上げようとするハナシカの様。


 結局、ティーフはこのふわふわ魔女に勝つ事は出来なかった。序盤、乱打戦に持ち込み、コルティナの右手を打ち据えて一本を先制し、観客達から大きな喝采を浴びたものの、それが却って勝利への焦りを生み、その隙を突かれる形で、頭部、右胴へと立て続けに二本取られて試合終了となる。


「最初の一本はお見事でしたー。来るのが分かってても、どうにも防ぎようがなかったですよー」


 試合後、抱き合って健闘を称えるコルティナに対し、


「ありがとうございます。最後にララメンテ家の大会で、コルティナさんと戦えて……本当に、よか……」


 感極まり、溢れる涙と嗚咽で声を詰まらせるティーフ。


 大きな図体をしてはいるが、涙もろいのは小学生の時からずっと変わってなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ