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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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452/638

◆452◆

 これまでに製作されたエーレとパティの応援旗がおかしな流れを作ってしまったらしく、ララメンテ家の剣術全国大会高校生の部では、ミノン、エーレ、コルティナの萌えイラストが描かれた応援旗が観客席に乱立する事態となる。


「見渡す限りの旗、旗、旗だな。剣術大会って言うより、賃上げ交渉の集会みたいだ」

「それはねえよ、旗に描かれてるのは可愛らしくデフォルメされた美少女剣士の絵ばっかりだぜ。極貧アニメーターの賃上げ交渉だったら、あるいはアリかもしれないが」

「サムライの国じゃ街のどこもかしこも、こんな風に萌え絵で溢れかえってるそうだぞ」


 一部の観客達は、サムライの国の文化をものすごく誤解している模様。あながち間違いとも言えないが。


「今回はすごいな。『エーレマークⅡ』の応援旗だけでも、五、六十枚はあるんじゃないか?」


 試合場から観客席を見上げるティーフが、感心した様に言う。


「こうして旗を作って熱心に応援してくれてる事自体は、とてもありがたい事だわ。たとえその旗に、自分がロボット化されてる絵が描かれているとしても」


 そう言って、エーレはため息をついてから、

 

「でも、アレは何? 嫌がらせなの?」


 と、声を少し荒げた。


 観客席にひしめく「エーレマークⅡ」を描いた応援旗には、ことごとく、「躍動する青春の汗と涙と感動!」、というキャプションが付いていたのである。


「熱血ロボットアニメのキャッチコピーみたいでいいじゃないか」


「この前私が用意した横断幕の文章をネタにして、思いっきりふざけてる様にしか見えないんだけど!」


「それを言うなら、ミノンとコルティナの応援旗だってかなりふざけてるぞ、ほら」


 ティーフが指差す先にあるマントノン家の応援団が掲げるミノンの応援旗には、巨大怪獣の着ぐるみを着て喉元に空いている穴から顔を出している萌え絵のミノンが、高層ビルを剣で破壊している様子が描かれてており、これを見たミノン本人も、


「はっはっは、強そうで結構だ」


 といたく気に入っていた。


 また、ララメンテ家の応援団が掲げるコルティナの応援旗には、黒いトンガリ帽子をかぶった萌え絵のコルティナが、サムライの国の正装である紋付きの黒い羽織に灰色の袴姿で、片手で扇子を持って紫色の座布団の上に正座している様子が描かれていた。「エーレマークⅡ」に対抗してか、「八代目ふわふわ魔女」という肩書きが絵に添えられている。


「格好はサムライっぽいけど、剣持ってないね」

「持ってないね」

「って言うか、アレはサムライじゃなくてハナシカだよ。一人漫談タイプのコメディアン」

「でも、『八代目ふわふわ魔女』って何」

「確かサムライの国の芸人は代々芸名を受け継ぐの。それと、八って数字はラッキーナンバーらしいよ」

「でも、剣術関係ないね」

「ないね」

「コルティナ、優勝インタビューで一人漫談する気満々だね」

「だね」


 応援旗を見上げながら、早くも脱力気味のララメンテ家の選手達。

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