◆45◆
甲冑に七人の首が刎ねられ、今や屋敷の中の生存者は男子学生と女子学生の二人のみ。
女子学生の方は、屋敷内を甲冑にしつこく追い掛け回され、時々剣で斬りつけられる度に、着ている服がズタズタになり、白い柔肌が露わになっていくという辱めを受けていた。わざとやってないか、甲冑。
ついにスカートまで剥ぎ取られ、上は風通しのいい穴あきシースルー、下はパンツ一丁という、実にけしからん姿に成り果てた頃、女子学生はほうほうの態で、地下倉庫に逃げ込み、
「ここなら、大丈夫」
と呟いた瞬間、背後から肩に、ポン、と手を置かれる。
「ギャッ!」
悲鳴を上げたのは女子学生ではなく、驚いた彼女が振り向きざま放った鋭い拳を、顔面に食らって倒れた男子学生の方だ。
女子学生は詫びつつ、男子学生を助け起こすと、男子学生は地下倉庫の照明を点け、女子学生のあられもない姿を一目見て、すぐに自分の着ていたジャケットを脱ぎ、
「とにかく、これを着て」
と差し出した。
ここにはいないが、男性の観客の半数以上の、
「余計な事するんじゃねえ!」
という声なき声が聞こえてくる一方、大き目のジャケットの下端からのぞくパンチラ姿に、
「これはこれでアリ!」
という声なき声も聞こえてくる。ダメだこいつら。
それはともかく、周囲を見回せば、地下倉庫だけあって色々な物が置いてある。
「何か使えそうな物を見つけよう」
男子学生が提案し、二人であちこちを探し始めると、すぐに女子学生がとある木箱の蓋を開け、
「あったわ、こんな所にプラスチック爆薬が! 起爆装置一式も!」
と笑顔で振り向いた。
「でかした! これで勝つる!」
男子学生も、笑顔でそれに応える。
「なんで没落貴族のお屋敷の地下にプラスチック爆薬が……しかも、それを一目で分かる女子学生って……」
ひどいのを通り越して、もう無茶苦茶なこの映画の世界観に、ソファーから転げ落ち、床に引っくり返って笑うコルティナ。
一方エーレは何が何だかわからないながらも、クライマックスが近付いている事を予感して、ハラハラドキドキが止まらなかった。素直な、いい観客である。