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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第三章◆◆ B級ホラー映画を鑑賞して殺人鬼を研究する小学生女子について
44/632

◆44◆

 トンファーを両手に持った男子学生は、それらをくるくる回しつつ、大きく上下左右斜めに振り、相手に対し左を前にして、横向きに両足を大きく開いて立ち、左のトンファーを前方下向きにまっすぐ突き出し、右のトンファーを振り上げた状態で、ぴたり、と止まる。


 どう見ても素人の動きではない。一体この男子学生は何者だ。


 甲冑が横薙ぎに斬りつけて来る剣を、男子学生は左のトンファーで防ぎつつ、右足を大きく踏み出し、右のトンファーで相手の胴を突く。


 後方に数歩よろける甲冑を追って、左のトンファーで素早く相手の顔面を往復ビンタし、さらに両方のトンファーで胸への連続突きから、右のトンファーを下から振り上げて相手のあごを強打。


 ふらつきながらも剣を鋭く振り回して来る甲冑に対し、男子学生はそれらの攻撃を華麗なトンファーさばきでことごとくブロック。逆に甲冑の方が、男子学生のトンファーを剣で受けるのが精一杯になって行く。


 と、突然男子学生は攻撃をやめ、トンファーを持った両手をだらんと下げた。


 コォォォ、と音を立てて大きく息を吐き、甲冑が剣を振り上げて迫って来るのと同時に、


「トンファーキーック!」


 と叫びつつ、相手の腹に鋭い蹴りをブチ込む。


 ドゴォォォ。


 くの字に折れ曲がった甲冑の体が、後方に三メートル程吹っ飛び、激しく壁と衝突した。

 

 トンファーキック。


 凄まじい破壊力であるが、トンファーは全く関係ない。要するにただの前蹴りである。


 これを見て、同じく前方にくの字に体を折り曲げたコルティナが、激しくむせつつ笑う。


「トンファー……使って……ないし……」


 よほどツボだったらしい。


 その間に男子学生は右のトンファーを空中に放り上げ、半回転させてから受け止め、握りが前に来る様に持ち変えた。


 壁を背にして床にへたりこんでいる甲冑の元に歩み寄り、


「サイコパス野郎め。どこのどいつだか知らねえが、その汚えツラを見せやがれ!」


 と言いつつ、右のトンファーのトの字に突き出た握り部分を、相手の顔面を覆うシールドに引っ掛けて、そのまま勢いよく跳ね上げた。


 しかし、男子学生が驚いた事に、そのシールドの下にはあるべきはずの顔がない。全くの中空である。


 中に誰もいませんよ。


「ひっ!」


 画面の中の男子学生と、それを見ていたエーレが、同時に同じ悲鳴を上げる。


 次の瞬間、甲冑の振るった剣が、トンファーマスター、もとい男子学生の首をスパッと刎ねた。


 まず首が落ち、続いて胴体が倒れる男子学生。


 その後、甲冑はゆっくりと立ち上がり、顔面のシールドを下ろすと、カシャン、カシャンと音を立てて、部屋から出て行った。

 

 それはそれとして、後に残された男子学生の首なし死体が、両手にトンファーを握ったままなのが妙におかしい。

 

 剣や銃に比べ、マイナーな武器からは、どうしてもユーモラスな雰囲気がにじみ出てしまうのだ。

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