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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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436/638

◆436◆

「エーレマークⅡには勝てなかったよ……」


 あからさまにヨロヨロとした足取りで帰って来る、わざとらしい位虚ろな表情のコルティナを、


「微妙にツッコミにくいボケはやめて」

「いい試合を観せてもらった直後の余韻が台無しだよ」

「悪いけどすぐに決勝が始まるから、構ってあげる暇はない」


 温かく迎えつつも、冷たい言葉を浴びせるララメンテ家の仲間達。


「えーん、今しか出来ないボケが潰されたー」


「はいはい、そういうのは後にして。とりあえずこっち来て、今はエーレとミノンの試合を解説してよ」


「ひどい、私の試合なんかどうでもよかった、って言うのね!」


「いや、それも後でじっくり分析を聞かせて欲しいけど、やっぱり、この今日の大一番は見逃せないでしょう」


「まあ、戦闘ロボエーレマークⅡ対巨大怪獣ミノンだもんねー。ロボと怪獣と来れば、男の子がワクワクしちゃうのも無理はないかー」


「女の子だっつーの。でも、ま、そういうワクワク感は分かる」

「自家防衛戦で気合いが入ってる分、エーレマークⅡが有利だろうけど、ミノンも今日は好調だから油断は出来ないね」

「私、中盤でミノンと当たったんだけどさ、確かに妙な感じがしたよ。巨大怪獣のクセに、攻めるタイミングを冷静に見計らってたっていうか」


「そう、ミノンは本能の赴くままに戦う巨大怪獣をイメージすればまず間違いないんだけど、それ故に単調な攻撃パターンになりがちなのは、本人も自覚してるみたいでー、リズムを工夫する事でその単調さをカバーしようとしてる傾向が昔からあるねー」


 ふわふわお嬢様が真面目に解説しだしたのを見て、仲間達は真剣に耳を傾ける事にする。


「ミノンは普段から積極的に色々な音楽を聴いて参考にしてるらしいよー。何度も聴いてリズムを体に刻みこむのは、さほど難しい事を考えなくていいから、確かに巨大怪獣向きかもー。

「今日のミノンの試合を見てると、一本調子と見せかけて、微妙にリズムを変える努力をしてるのは、間違いないねー。特にレングストン家の選手が相手の時は、分かり易かったー。逆にレングストン家の選手の方が一本調子に見える位でー。

「でも、エーレマークⅡはそんな小細工が通じる相手じゃない事は見ての通りだねー。ミノンも私の時みたいに、初っ端いきなり速攻で一本取られる可能性もあるよー」


 コルティナがふわふわと解説をしている内に、エーレとミノンが試合場へ進み出て、会場は喧騒に包まれた。


「そこでミノンも目の光を失って堕ちた状態で、『エーレマークⅡには勝てなかったよ……』ってー」


「さ、いよいよ決勝だ!」

「どっちも頑張れー!」

「ウチの大会に向けて、どっちのデータもしっかり分析してやるからなー! コルティナが」


 ふわふわお嬢様がふざけ出したのを見て、仲間達は観客達と共に決勝戦を楽しむ事にする。

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