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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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◆427◆

 レングストン家の中学生の部の大会終了後、会場を出たララメンテ家の選手達と応援団の一行が、今日の試合についてあれこれ話しながら歩いている内に、自然とコルティナの用意した横断幕について「ふざけるのもいい加減にしなさい」と糾弾する流れになり、


「やっぱり、リズムは重要だよねー。剣術もお笑いもー」


 その糾弾をスルーして、コルティナがそんな事をぽつりと言う。


「いや、なんで『アホな横断幕はもうやめよう』って話からそうなるの」

「それと、剣術はともかく『お笑い』って何よ」

「唐突に話の流れを変えられると、不安になるからやめて。主にあんたの脳の状態が」


 いつもの様に仲間達から総ツッコミを受けるコルティナ。


「相手の虚を突くリズムの有効性を、皆に理解して欲しくてー」


「ごめん、コルティナが何を言いたいのか、さっぱり分からない」


「お笑いにはリズムが重要だって事は、いつも言ってるよねー」


「うん、私達はいつも聞き流してるけどね」


「そう、単調なリズムが続くと、お客さんは自然と話を聞き流す様になるのー。そうなると、どんなに秀逸なギャグをかましても、全然反応してくれなくなって悲しいのー」


「リズム云々より、そのギャグ自体に問題がないかどうか考え直した方が早いと思う」


「だから、お笑いの名人上手と言われている人達はリズム、専門用語で『間』をとても大切にするのー」


「お笑い芸人より、剣術の名人上手の話の方が聞きたいんだけど」


「使い古されたギャグでも、絶妙な『間』を与える事であら不思議、ドッカンドッカン笑いが取れる事も珍しくないんだよー」


「私達はお笑い芸人じゃないから、ドッカンドッカン笑いを取る必要はないと何度言えば」


「剣術にこれを当てはめてみるとー、例えば今日のレングストン家の選手達は、剣の実力で遥かに上回るパティ相手にかなり善戦してたよねー」


「あ、やっと剣術に戻った」


「パティの持つ独特の『間』を読み切って、これを潰す『間』で対抗したという見方も出来るんじゃないかなー?」


「まあ、データ分析ってそういう事だよね」


「データ分析だけじゃないよー。日常生活の中でもこういう『間』について常に心がけていれば、いざと言う時役に立つよー」


「例えば?」


「応援に使う横断幕の文面にちょっぴりユーモアを添えて、会場の雰囲気を和ませてみたりー」


「おい、待て」


「突然それまでの話の流れに合わない話題を提供して、皆のトゲトゲしい気分をほぐしてみたりー」


「ただの空気読めない子だよ、それ!」


「うふふ、常住坐臥、全て修行だよー」


 いつもの様に与太話でふわふわと皆を煙に巻き、ニッコリ笑うコルティナ。


「で、横断幕の件なんだけど」


 その後、再び横断幕の文面について「ふざけるのもいい加減にしなさい」と糾弾されるコルティナ。

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