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レングストン家の中学生の部の大会終了後、会場を出たララメンテ家の選手達と応援団の一行が、今日の試合についてあれこれ話しながら歩いている内に、自然とコルティナの用意した横断幕について「ふざけるのもいい加減にしなさい」と糾弾する流れになり、
「やっぱり、リズムは重要だよねー。剣術もお笑いもー」
その糾弾をスルーして、コルティナがそんな事をぽつりと言う。
「いや、なんで『アホな横断幕はもうやめよう』って話からそうなるの」
「それと、剣術はともかく『お笑い』って何よ」
「唐突に話の流れを変えられると、不安になるからやめて。主にあんたの脳の状態が」
いつもの様に仲間達から総ツッコミを受けるコルティナ。
「相手の虚を突くリズムの有効性を、皆に理解して欲しくてー」
「ごめん、コルティナが何を言いたいのか、さっぱり分からない」
「お笑いにはリズムが重要だって事は、いつも言ってるよねー」
「うん、私達はいつも聞き流してるけどね」
「そう、単調なリズムが続くと、お客さんは自然と話を聞き流す様になるのー。そうなると、どんなに秀逸なギャグをかましても、全然反応してくれなくなって悲しいのー」
「リズム云々より、そのギャグ自体に問題がないかどうか考え直した方が早いと思う」
「だから、お笑いの名人上手と言われている人達はリズム、専門用語で『間』をとても大切にするのー」
「お笑い芸人より、剣術の名人上手の話の方が聞きたいんだけど」
「使い古されたギャグでも、絶妙な『間』を与える事であら不思議、ドッカンドッカン笑いが取れる事も珍しくないんだよー」
「私達はお笑い芸人じゃないから、ドッカンドッカン笑いを取る必要はないと何度言えば」
「剣術にこれを当てはめてみるとー、例えば今日のレングストン家の選手達は、剣の実力で遥かに上回るパティ相手にかなり善戦してたよねー」
「あ、やっと剣術に戻った」
「パティの持つ独特の『間』を読み切って、これを潰す『間』で対抗したという見方も出来るんじゃないかなー?」
「まあ、データ分析ってそういう事だよね」
「データ分析だけじゃないよー。日常生活の中でもこういう『間』について常に心がけていれば、いざと言う時役に立つよー」
「例えば?」
「応援に使う横断幕の文面にちょっぴりユーモアを添えて、会場の雰囲気を和ませてみたりー」
「おい、待て」
「突然それまでの話の流れに合わない話題を提供して、皆のトゲトゲしい気分をほぐしてみたりー」
「ただの空気読めない子だよ、それ!」
「うふふ、常住坐臥、全て修行だよー」
いつもの様に与太話でふわふわと皆を煙に巻き、ニッコリ笑うコルティナ。
「で、横断幕の件なんだけど」
その後、再び横断幕の文面について「ふざけるのもいい加減にしなさい」と糾弾されるコルティナ。




