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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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423/638

◆423◆

 観客の熱狂的な盛り上がりとは対照的に、決勝戦は地味でギクシャクした攻防が続く。


 仕掛けるタイミングを窺いつつ、中段に構えた剣を心持ち前に突き出す様にしてじりじりと迫るパティに対し、ゾッケは相手との距離を保ちつつ、剣を横に持ち上げたり傾げたりと、せわしなく構えを変え続け、その姿はまるで「こう来たら、こう」と予めプログラミングされた工業用ロボットの様である。


 ゾッケの動きは一見ぎこちないものの、パティは非常にやりにくそうで、


「すげえな。一分以上経っても、パティが攻めて来ない」

「ネタ潰しされた『大道芸人』ってとこだな。アウフヴェルツの最新機器が、パティの持ちネタを全部分析し尽したのか」

「いや、まだパティはネタのストックがたくさんありそうだけどな。でも、無名選手がここまでパティを追い詰めてるって事自体がすげえわ」


 観客達は、レングストン家とアウフヴェルツ社によるパティ攻略の成果にひたすら感服し、


「パティは本当にデータを分析され尽してると思う?」


 もう優賞争いとは縁のないララメンテ家の応援団も、この意外な展開に目を丸くしながら、コルティナにコメントを求めた。


「分析され尽している、って事はないねー。パティの持ちネタに全部対応しようと思ったら、数年単位の準備期間が必要だよー」


 丸い巨大えびせんを食べながら、ふわふわと答えるコルティナ。


「じゃあ、パティが慎重になってるだけ?」


「だねー、未知の要素が大きいゾッケに、思わぬ形で一本取られたら怖いしー」


「あの『大道芸人』を、そこまで警戒させるなんてねえ」


「ゾッケだけじゃなく、今日これまで対戦してきたレングストン家の選手達全員が、パティを封じてるとも言えるねー。『今日のレングストン家はヤバい』って、その身で感じ取ってるからー」


「アウフヴェルツ社の最新VRを使った特訓の成果?」


「そー、パティへの『恐れ』と、自分に対する『迷い』が払拭された事が大きいかなー。パティのVRモデル相手に何度も挑んで慣れたんだろーねー」


「慣れ、か。一理あるかも」


「ウチもパティのお面を作って、それを被った相手と特訓してみるー?」


 コルティナがネタに走り出したので、聞きたい事を全部聞いた仲間達はスルーして試合場に目を転じる事にする。


 残り時間もあとわずか。ギクシャクと剣を横に持ち上げてパティの攻撃を警戒していたゾッケが、突如その態勢から体を高速で旋回させてパティの右胴を素早く打ち、パティも一瞬遅れてゾッケの頭部を打ち据えたものの、相打ちの相殺には至らず、ゾッケの一本が認められた。


 これが致命傷となり、パティは残り数秒で猛ラッシュを仕掛けるも、逃げ切られる形で試合終了、ゾッケの優勝が決定する。


 沸き上がる大歓声が巨大会場を震わせる中、レングストン家の応援団も跳び上がって喜び、


「ついにやったわ!」

「VR特訓の成果ね!」

「アウフヴェルツ家に感謝よ!」


 興奮収まらぬ様子でエーレに突撃。


「ちょ、ちょっと、やめなさい! 何で私が!」


 勝利の喜びに浸る間もなく、仲間達からよってたかってもみくちゃにされるエーレ。


「エーレ・アウフヴェルツ万歳!」

「誰がエーレ・アウフヴェルツだっ!」


 そんなもみくちゃ状態のエーレを、もちろん、別の場所からしっかり録画しているエーヴィヒ・アウフヴェルツ。


 その後、画像解析と読唇術により、エーレが「誰がエーレ・アウフヴェルツだっ!」と喚いているシーンは、エーヴィヒにとって貴重な宝物となった。

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