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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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422/638

◆422◆

「ララメンテ家の選手はあまり動かないでパティの出方を窺ってる事が多いな。レングストン家の選手はパティの動きに合わせて絶えず立ち位置を変えてる感じだ」

「パティがやりにくそうにしてる所を見ると、どっちのやり方もある程度までは正解なんだろう。ただ、それでも中々勝てないんだから、完全に正解って訳じゃなさそうだが」

「そりゃ、パティとの実力差はいかんともしがたいだろ。でも、それだけ実力差があるのに、勝ってもおかしくない様な気がして来るから不思議だ」


 予想以上に「大道芸人」パティを追い詰めた、ララメンテ家とレングストン家のそれぞれのデータ分析戦術を、さらに熱心に分析している観客達をよそに、


「惜しいわね。早くパティを倒せれば、それだけ早く痴漢被害は止まるのに」


 データ分析という手段より、パティ退治という目的の方に心奪われるエーレ。


 そんなエーレの願いもむなしく痴漢、もといパティがしぶとく生き残ったまま大会は終盤を迎え、ララメンテ家最後の選手を準決勝で下したこの「大道芸人」は、続く決勝戦でレングストン家の最後の守り手となる中学三年生、ゾッケ・ハントシューと対戦する事になった。


「どう思う、エーレ? ゾッケに勝ち目はあるかな?」


 でかい図体の割に心配症のティーフが、まるで我が事の様にハラハラしながら、隣のエーレに尋ねる。


「ウチの選手なら誰でも、パティへの勝ち目を持ってるわ!」


 ちっちゃくても熱血気質のエーレが、まるで我が事の様に闘志を燃やしながら、ティーフに答える。


「確かに、勝率一定のゲームは回を重ねれば重ねるほど、少なくとも一回は勝つ確率が上がるけど」


「確率じゃないわ。気合いよ!」


 エーレ、最後の試合を前にして、とってもバーニング。


 度々痴漢被害に遭っているという個人的な恨みもあるが、変態ではあっても間違いなく中学生最強の剣士パティに、無名に近い選手達が懸命に研究と練磨を重ねて果敢に挑んで行く姿を見て、どうしても熱くなってしまうのである。


「気合い、か」


 そうつぶやいて、ティーフが試合場に目を転じると、肝心のゾッケはパティの動きに細かく対応する様に、小刻みに立ち位置と剣の構えを変え続けており、気合いというより冷静に計算して防御を固めている感じの方が強い。


「ま、まあ、気合いにも色々あるから」


 隣のエーレに気を遣いながら、自分を納得させるティーフ。割と人に振り回されやすいタイプ。

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