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逃げ足道場 番外編 ~ウチの女当主が怖過ぎる件について~  作者: 真宵 駆
◆◆第十四章◆◆ 圧倒的な才能と最新鋭の技術と天賦の洞察力との三つ巴戦について

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405/638

◆405◆

 レングストン家の最新機器によるデータ分析も、ララメンテ家のふわふわ魔女による神懸かり的なデータ分析も、この勢いに乗る「大道芸人」の動きを封じる事が出来ず、結局その年のマントノン家の剣術大会の中学生の部は、大方の予想通りパティの優勝で幕を閉じた。


「最後まで内外の手強い選手達と心ゆくまで剣を交えられた事を嬉しく思います。今日は本当にありがとうございました」


 優勝インタビューで、パティは出場選手達の健闘を称えた後で、


「もちろん、この後行われるレングストン家の大会とララメンテ家の大会にも出場する予定です。データ分析に定評のある両家の選手の皆さんが、今日のデータをどの様に試合へフィードバックして来るのかを、今から私も楽しみにしています」


 穏やかな言い方ではあったものの、実質的にレングストン家とララメンテ家のデータ分析主義に対する挑戦状を叩きつけるも同然のコメントを言い放ち、会場からは一斉に歓声が上がる。


「要は、『データ分析主義など恐るるに足らず。せいぜい私を楽しませてくれ』、とほざいてるのよ」


 沸きに沸く観客席の中、腕を組み不敵な笑みを浮かべてパティを睨みつけるエーレ。


「まあ、観客へのサービスだろうね。ウチの大会の宣伝にもなるし、本当にこういう所は上手いと思うよ。パティにしてもコルティナさんにしても」


 隣のティーフがそう言って見やる先には、コルティナを中心としたララメンテ家の応援団が、


「渡る世間に鬼はない」


 と書かれた意味不明な横断幕をまだ掲げていた。


「本当に意味不明ね、あの横断幕は。何をどう応援しようとしているんだか」


 呆れた口調のエーレ。


「でも大会中盤でコルティナさん達があれを掲げた時、会場がどっと沸いたのは事実だ。私だって不覚にも噴いてしまった位で」


「そうやって甘やかすから、悪ふざけがエスカレートしていくのよ」


「あからさまな商業利用や誹謗中傷の類じゃなければ、多少のおふざけも別にいいと思うけど。選手達の緊張をほぐす狙いもあるんだろうし」


 二人がそんな会話をしている一方で、ララメンテ家の応援団は、


「いつまで掲げてるの、コレ」


 結構な恥ずかしさに耐えながら、暗に「このふざけた横断幕は早くしまえ」とコルティナを促していた。


「パティの優勝インタビューが終わるまで、もうちょっと待っててー。で、インタビューが終わったら、すかさずこっちの横断幕を掲げるからー」


「まだ何か変な事企んでるのか」


 呆れつつも、コルティナが最後に何をやらかすのか、内心ちょっと期待する仲間達。


 そして、いよいよパティのインタビューが終わると同時に、


「はい、ここで行くよー!」


 コルティナの合図で、ララメンテ家の応援団が素早く広げた横断幕には、


「明日には明日の風が吹く」


 と書かれていた。


 このますます意味不明な格言のチョイスに、観客は再びどっと笑ったものの、


「同感だわ、コルティナ」


 エーレは観客席で深く頷いていた。

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